ご褒美は唇にちょうだい
カットの声がかかり、モニターチェックののち、このシーンはOKとなった。
やっぱりね、とほくそえむと、隣で小鍛冶くんも笑った。


「小鍛冶奏さん、以上でクランクアップとなりまーす!」


助監督が声を張り、わあっと会場が湧く。
スタッフがお花を渡し、私も大きなガーベラの花束を彼に手渡す。
今日は取材も入っている。噂になった私と小鍛冶くんのツーショットにフラッシュがたかれた。


「操さん、ありがとうございます!必ず、またどこかの現場で会いましょう!」


「ええ、楽しみにしてます」


答えて微笑んでみるものの、フラッシュの光がやけに眩しくて、眩暈がする。

輪から一歩離れて、久さんと環のもとへ戻った。
チカチカ光る視界。片頭痛がくるかな。
なんとなく手足のむくみが今日はひどい気がする。


「お姉ちゃん、天才!このシーンだけなのに、私、涙でたぁ」


環が私の背をバシバシ叩きながら言う。


「痛い、痛い。叩かないでよ、環」
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