ご褒美は唇にちょうだい
やっぱりくらくらする。休憩も挟まるので、ちょっと楽屋に戻ろうかな。

この前、二上さんに言われたけど、やっぱりなんだかんだと疲れているのかもしれない。


「操さん、あまり顔色がよくないですよ」


久さんがさっと私の背に手を回す。
全身を彼に預けてしまいたい衝動を抑え、私はすっと歩き出す。


「大丈夫よ。フラッシュが眩しかっただけ」


「え?お姉ちゃん、確かに調子悪そうかも。急に元気ないよ」


環も覗き込んでくる。笑おうとすると、笑顔がひきつれた。
なんだろう、変な感覚だ。
シーンが終わって緊張の糸が切れたにしても、身体に不自由感を覚える。

廊下を進み、楽屋の前まで来ると後ろから声をかけられた。


「操さん!」


「小鍛冶くん」


小鍛冶くんが追いかけてきたのだ。
手にはまだ花束を持っているから、スタジオを出てそのまま来たのだろう。
おおかた、またマネージャーさんは置き去りだ。

私の横で環がきゃっと小さく歓声を上げた。
環のファン心理が微笑ましい。
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