ご褒美は唇にちょうだい
「今日はバラしになりました。あなたは貧血を起こしたことになっています。救急車も呼ばず、俺が病院に運びました」


「そうなんだ。ありがとう」


「お礼は退院後に環さんと小鍛冶くんに。ふたりがだいぶ手伝ってくれました」


「助かるなぁ」


ふうと嘆息する。
騒ぎにせずにいてくれた三人の手際に感謝だ。


「操さん」


「まさか本当に貧血じゃないよね。何か言ってた?ドクター」


「明日、俺と話を聞きましょう」


久さんが私の右手をぎゅっと握る。
私は軽く握り返す。というより、軽くしか力が入らなかった。

久さんはもしかすると、ある程度話を聞いているかもしれない。
でも、久さんが明日というなら、それに従う。

頭を撫でてくれる感触を心地よく思いながら、私は眠りに落ちた。




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