ご褒美は唇にちょうだい
「大きいと言えます。無症状なら経過観察から入るんですが、すでに鳥飼さんには頭痛や吐き気が出ています。手がむくんで動かしづらいとおっしゃってるのも、軽度の指先の麻痺でしょう」


「手術でとるってことですか?」


今度は母が口を挟む。


「なるべく早い段階でとることをお勧めします。脳腫瘍は、取り出して組織検査をしてみないと、最終的に良性悪性の区別がつきません。なにより、日常生活に支障がでてきていますので早い方がいいでしょう。手術は腫瘍の大きさによって変わるのですが、小さければ動脈にカテーテルを入れて手術できます。今回は開頭手術になります」


じゃあ、すぐにと、母が言いかけた。私は遮って言った。


「ドラマの撮影が終わる1月末まで手術はしません」


「操!」


母が悲鳴のような声を上げた。
予想通り。私は無視して、医師に向き直る。


「通院はします。手術はクランクアップ後にしたいです」
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