ご褒美は唇にちょうだい
「こんばんはー!お邪魔しますー!」


操の部屋に陽気に現れた小鍛冶奏は、操の病気がわかった時以来だから、一ヶ月半ぶりになる。


「どうしたの?小鍛冶くん」


操は体調が悪いはずなのに、突然現れた小鍛冶にクスクス笑っている。


「いやぁ、操さんと真木さんが同棲を始めたって、環さんに聞きまして。こうしちゃいられないと邪魔をしにきました」


俺の手に紙箱入りの生菓子を押し付ける小鍛冶。
同棲……環さんはいったい何を吹き込んだのだろう。

小鍛冶は操が倒れた時にその場にいた。
人目につかないよう、操を車に乗せるのを手伝ってくれ、その後俺から礼はしてある。操も携帯では連絡をしたようだ。


「小鍛冶くん、環と連絡とってたの?」


「はい、操さんが心配だったので、あの日からLINEで。結構頻繁に連絡とってます。今日、お邪魔するのも環さんには言ってあります」


「私に連絡してよ……。って、環の『ごめんね』はこれかぁ。住所とか、家にいる時間とか聞いたのね」


「そうですよー」


なんてのん気なストーカーだろう。
まあ、いい。操が久しぶりに素で笑っていることにほっとする。
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