ご褒美は唇にちょうだい
「小鍛冶くん、これから食事ですがきみもどうですか?」


あまり重たいものを操は食べたがらないので、簡単にオープンサンドでも作ろうかと思っていたが、小鍛冶青年がいるなら話は別だ。パスタにメニューを変更する。
操もつられて少し食べてくれるといい。


「いいんですか?いただきます!っていうか、真木さんの旦那さん感が半端ないんですけど」


「いいでしょう、私の旦那さん」


操がへらへら冗談を言って立ち上がる。ふらりとキッチンにやってきた。


「久さん、小鍛冶くんに冷たいもの出してあげて」


自らグラスを手にするけれど、くせもあり利き手で持ち上げてしまった。
グラスはあえなく床に落ち、硬質な音をたて割れた。
操が失敗を苦い顔で見下ろす。


「操さん。俺がやりますから、あちらで小鍛冶くんと待っていてください」


「うん、ごめん」


「謝らないで」


すると、一部始終を見ていた小鍛冶がやってきた。
俺の横にしゃがみ、グラスの破片をつまむ。


「小鍛冶くん、指を切るのでやめてください」


俺の制止に答えず、大きな破片を拾いきってしまうと、小鍛冶は言った。
< 164 / 190 >

この作品をシェア

pagetop