ご褒美は唇にちょうだい
「操さん、真木さん。俺、環さんから全部聞いてますってば。俺もあの場にいたし、操さんのこと好きだから聞く権利あると思ってたし」


「それは……」


「操さんの病気の話、全部きちんと説明してもらってます」


小鍛冶は操の病状をすべて環さんから聞き知っているのだ。
おそらくは命の保証をされていないことも。


「操さんが身体がつらいのも知ってて押しかけました。それでも顔が見たかったから。真木さんと幸せそうで、最初っから嫉妬しまくりましたけど」


そこで小鍛冶がふふっと笑うので、操も苦笑いする。


「操さん、真木さん、俺に合わせてメシとか無理しなくていいですよ。吐き気がひどいってのも聞いてます。持ってきたお菓子だって、食べやすいかなーってゼリーとかだし。俺なりに気をつかってみたりしてるんです」


「小鍛冶くん」


「って俺、から回ってます?大丈夫ですか?」


「小鍛冶くん、ありがとう」


操が心底嬉しそうに笑った。
年よりずっと幼い笑顔で、こんな無邪気な表情はなかなかお目にかかれないものだ。


「今日は小鍛冶くんがいるから、少し食べられそうだよ。一緒に夕食食べてってよ」
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