ご褒美は唇にちょうだい






操の体調は一進一退だった。
調子よく平常通りに演技できる日もあれば、鎮痛剤も脳圧を下げる薬も効かず、頭痛を抱えながらなんとか仕事をするという日もあった。

やはり、操はそんな不調を一切周囲には見せなかった。
事実を知っている者以外、操を病気だと思う人間はいないだろう。
利き手の麻痺すら、そうは見せないのだからすごい。

根本である腫瘍を取り除かなければ、操の体調はよくならない。
もっと言えば、悪性良性の判断も据え置かれたままだ。
腫瘍は広がっていないものの、症状が強くなっている点と、一部の境界が曖昧な点が懸念材料だった。

悪性であれば、命にかかわる。
本音を言えば、早めに操がリタイアを申し出てくれればいいと思う。

同時に、それだけは絶対ないともわかる。

だから、俺は従順な騎士でいる。
操が一番動きやすい状態にしてやるしかない。

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