ご褒美は唇にちょうだい
もういい。

もうやめた。

操を唯一無二の女優にしたかった。そのためにはこの感情は邪魔だった。
その気持ちは変わっていない。

しかし、操をこれほど苦しめひとりにするくらいなら、俺の誓いは無意味だ。

操の命が愛しい。
操の命を守るために、俺は生きたい。


彼女の才能を愛したように、彼女自身を誰よりも愛しているのは俺なのだ。



「操」


俺は操の背に腕を入れ、細い身体を抱き起こした。
それからぎゅうっと抱きしめる。


「久さん?」


戸惑っている様子の操は、まだ涙で鼻にかかった声をしている。


「操、俺のものになってくれ」


「久さん……ふざけてるの?」


「ふざけてない。同情でもない。マネージャーとしてでもない」


身体をわずかに離し、操の顔を真っ直ぐに見つめた。
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