ご褒美は唇にちょうだい
終
ずいぶん長く眠ったような気がする。
半覚醒の視界はまだ薄暗く、今が何時かも何日経ったのかもわからなかった。
ここが病室で、自分の身体がまだ動かせそうもないことだけわかる。
ドラマのクランクアップ後にその足で入院した。
手術はその翌日と最初から決めてある。私の緊急入院は手術日の朝刊を賑わせたらしい。
その手術からどのくらい時間が経っただろう。
目覚めたということは、ひとまず生きているようだ。私の脳に育った瘤がとれたかは別として。
指一本動かすことすらできず、身体なんて二度と起こせないかもしれないというほど、力が入らない。
無理に辺りを見回さず、思い出せる最後の光景を浮かべる。
手術室に入る時の久さんの顔だ。