ご褒美は唇にちょうだい
だけど、私たちはもう決めた。一緒に生きるって。

恋も愛も、願いも夢も、全部一緒に未来へ運ぼう。

あなたの夢は、これからも私が過たず叶え続ける。


誓いの儀式はもう少し先でもいい。
そこで、私は最初のお願いをすることにした。

女優・鳥飼操からマネージャー・真木久臣へのいつものお願いであり、
恋人としては最初のお願いだ。


「久さん、私頑張ったでしょう?」


「ええ、あなたは病気を押してヒロインを演じきった。手術も乗り越えた。素晴らしい」


「じゃあ、ご褒美をちょうだい」


言ってから、私はふっと息を詰め、右手にこれでもかと力を込めた。
手術前には動かしづらかった右手は、重くてだるかったけれど、どうにか持ち上がる。

震える手を握り、立てた人差し指で唇をさす。

そうして、私は微笑んだ。


「ここに」


久さんが切れ長の瞳を細めた。
それから、彼のご褒美が私の唇に落ちてきた。

柔らかく甘く、
生きている実感を持って。




<了>




2016.4.30
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