ご褒美は唇にちょうだい
番外編
スーパーのカートに次々と食品を入れていくこの男の子は、きっと私のことを母親か何かだと思っているのだろう。
だってね、食玩とか入ってるもの。
普通、友人との買い物で食玩買う?どうする気なのよ、それ買って。
お姉ちゃんと真木さんに見せる気ですか。
「環ちゃん、ピザとか買わない?」
「買わない」
「はあ」
のん気な声で返事する小鍛冶奏くんは、一応芸能人ということもあり、サングラスにニットキャップ姿だ。
背が高いのは隠しきれないけれど、なるべく会話は小声。
今、私たちがいるのは我が家の近所の一般的なスーパー。
まあ、まさかここに人気若手俳優がいるだなんて、誰も思わないだろう。