ご褒美は唇にちょうだい
スーパーを出ると、私たちは電車で姉の住むマンションへ向かった。
新宿で乗り換えた小田急線は、土曜の昼下がりでも結構人が乗っている。

私たちは目立たないようにドア付近に立つ。
奏くんは荷物のほとんどを持ってくれている。彼が選んだものばかりなんだけど。


私と奏くんはお姉ちゃんを通じて仲良くなった。
私が、もとからちょっとファンだったというのは、本人には言っていない。

お姉ちゃんが病気をした時はふたりで情報を交換し合って、ちょっとした運命共同代みたいな雰囲気で親しくなった。

でも、友人になってみると、奏くんはちょいちょい危なっかしくて天然で、舞台やテレビで見るイケメン俳優とは程遠い。
私はひそかにため息をついたものだ。
みんな、彼の顔と演技に騙されてる。

それを言うならお姉ちゃんもそう。
鳥飼操は前回の朝ドラの影響でクールビューティー女優から、国民的愛され系女優として好感度をあげたみたい。

中身は人見知り&神経質な根暗女子なんだけど。

あーあ、役者ってホント視聴者をだまして夢を見させるのが仕事なのね。
彼らを見てるとよっくわかる。


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