ご褒美は唇にちょうだい
「操さん、元気かなぁ」


お姉ちゃんのマンションまでは徒歩5分。てくてく歩きながら、奏くんが言う。


「元気じゃない?愛する真木さんとラブラブ同居生活だし」


「ホント、それだけが悔しい。嫉妬しちゃう」


奏くんはいまだにお姉ちゃんのことが好きなんだろうか。
でも、真木さんとお姉ちゃんが恋人同士になったことは知っているはず。それでもあきらめられないのかな。

まあ、私には関係ないし、なんでもいいんだけど。


「体調もいいんだって。腫瘍は良性で綺麗に取れたし、後遺症もなし。定期健診は必要だけど、退院してすぐにジムで体力戻して、先々週から仕事復帰だもん。パワフルだわ」


トークをお姉ちゃんの体調に戻して答えると、奏くんも言う。


「ホントさ、強いよね。病気を隠して朝ドラを撮ってたことを非難する人もいたけど、操さんはやりきってるもん。誰にも文句は言わせないよ」


一度言葉を切って見上げるのはお姉ちゃんの住むマンション。
ぼそりと奏くんが続きを言う。


「憧れるよ、操さん」

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