ご褒美は唇にちょうだい
「本当は外でやるつもりだったんだけどね。パーティー」


「まだ、操さんも本調子じゃないですから。疲れたらすぐに休める環境は必要です」


私は立ち上がり、買ってきたばかりの花を花瓶に活ける。久さんがやってきて、私を制す。


「指に傷がつきます。俺がやりますから」


「過保護」


「なんとでも言ってください。俺が嫌なんですよ、あなたに小さくても傷がつくのが」


久さんは私の手術痕すら惜しんでいる。
ともに眠りながら、頭部の傷痕にキスをしてくれることもしょっちゅうだ。

仕方のないことだと言っても聞き入れてくれない。

私は花を活ける彼の手を止め、向き合う格好になると彼の腕の中に飛び込んだ。
ぎゅうっと背に手を回し抱き着く。


「環たちが来たら、しばらくくっつけないでしょう?」


「俺としては、小鍛冶くんに見せつけるのも吝かではありません。……でも操さんが嫌ならやめましょう」


久さんは残念そうに言って、それから私の唇をキスでふさいだ。
軽くキスをし合いながら、私たちは笑い合う。


「キス、やめらんないね」


「やめなきゃいけないと思うと、名残惜しいものです」
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