ご褒美は唇にちょうだい
深夜帯、道はさほど混まず、彼女の住む部屋までは30分ほどで到着だった。
ハイセキュリティな単身者向けマンションは代々木にある。
地下の居住者用駐車場に入り、到着を知らせようと振り向く。
後部座席で彼女……鳥飼操(とりかいみさお)はこちらをじいっと見ていた。
「操さん?」
助手席に左手をつき、覗き込む格好になると、操が言う。
「局での本読み、疲れた。松下さん?あの人が1ページに2、3回口出してくるの」
「ええ、お疲れ様です」
「うるさいのよ。キャリアがあっても、あそこまで言える立場にはないわ。演出の中村さんがかわいそう」
「ええ」
そこで、操が黙る。
彼女は自分からは誘えない。
だから、俺は右手でおいでおいでをしてみせる。
「操、こっちこい」
口調を露骨に変えるのは、彼女の抵抗を薄めるため。
操はぴくっと肩を揺らすと、おずおずと身を乗り出し顔を近づけてくる。
ハイセキュリティな単身者向けマンションは代々木にある。
地下の居住者用駐車場に入り、到着を知らせようと振り向く。
後部座席で彼女……鳥飼操(とりかいみさお)はこちらをじいっと見ていた。
「操さん?」
助手席に左手をつき、覗き込む格好になると、操が言う。
「局での本読み、疲れた。松下さん?あの人が1ページに2、3回口出してくるの」
「ええ、お疲れ様です」
「うるさいのよ。キャリアがあっても、あそこまで言える立場にはないわ。演出の中村さんがかわいそう」
「ええ」
そこで、操が黙る。
彼女は自分からは誘えない。
だから、俺は右手でおいでおいでをしてみせる。
「操、こっちこい」
口調を露骨に変えるのは、彼女の抵抗を薄めるため。
操はぴくっと肩を揺らすと、おずおずと身を乗り出し顔を近づけてくる。