ご褒美は唇にちょうだい
「久(きゅう)さん」


「届かない。もっと近付け」


クラウンは車内が広い。操が座席から腰を浮かせたところで、後頭部をつかみ引き寄せた。

唇同士を柔らかく合わせる。
最初は接触部分を少なく、何度も焦らすように重ね、こするようにかすらせ、角度を合わせ一気に深く。

舌を差し込み荒々しく口腔を刺激すると操が背を震わせ、俺の首にしがみつく。


「んんぅっ、……あっ」


操の口から漏れる声に、今日も彼女が満足し安堵していることを知る。

いっそう深く彼女の唇を蹂躙し、味わい尽くしてから、突き飛ばすように解放した。

操のしなやかな身体が座席のシートに弾んで、沈む。

呼吸を整える姿すら見せずに、俺はいつもの口調で言った。


「では、明日は8時に迎えに来ます。関東テレビの金曜ドラマ『中天に輝く』。終日、スタジオ収録です」


「……わかってる」

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