君と10cm。
…ねぇ、母さん。

恋ってなんだろう。

お母さんはお父さんと恋をしてたの?

本当に?

じゃあ、なんでお父さんはお母さんが死んじゃっても裏切ったの?

永遠の愛じゃ、なかったの?

…私は、とても辛い。

妹も私には似ていない。

でも可愛いのは仕方がないよね、年下だし。

でも、今の御母さんは好きにはなれない。

私に酷いことをしてくるし、私に酷いことを言ってくる。

だからね、私は永遠の愛を知ってみたい。…お願いだから、それだけは天国から応援して…。

そう仏壇の前で手を合わせ、隣にある布団に入り、眠気と一緒に引き込まれて眠りについた。

晴れわたる空、白い雲。

輝くような太陽、…今日は、すごくいい天気だなぁ…。

「おいエーコ!」

後ろからドカッと押してくる人影に、私はイライラをかもし出すように冷たくあしらうような目で人を見た。

「そんな顔すんなよ。エーコ笑ってたほうが良いじゃん。」

と、無愛想なのに、普通の女の子ならキュンキュンしてしまうセリフばっかり言ってくる。

"朝から元気なことで、良いことじゃないですか"と手話で挨拶をして、私の態度がそっけなさ過ぎたのかは知らないけれど、黒澤がプンプンしている。

「エーコちゃん?あれ。」

「エーコちゃんじゃね。」

「相原さんだ!」

なんで、なんでこんな私有名なの、え、え?

「相原さんってさ、相原 穹の娘さんでしょ?!」

ま、まぁそうだけど…。

言葉じゃ話せないから、ウンウンと頷いてその質問をしてくる女の子一人と野郎二人に視線を向けた。

「やっぱり~!目元が似てるね!すっごい美人!」

そう言ってくれる女の子は、「私と友達になってほしいんです!夢をおいかけることは素敵ですよね!私はピアニストになりたいんです。」

と、ワクワクしたような口調でいってきた。

ついつい私もつられてワクワクしてきちゃって、ノリで手話をやってみたら、「えっ?」と言う顔をされてしまった。

所詮友達ってこんな感じなのかなとか思ってる私だけど、実際は欲しくて、でも、言葉に表せないからできなくって…っていうことが毎度毎度起きちゃう。

黒澤が私のことについて話すと、少年少女らは「納得、納得」と続くようにウンウンと頷いた。

「喋れないって言うデメリットは、とても大変だよね…。私も指が使えなくなったらもうピアニストもできないし…。それでも夢を追い続けてるエーコちゃんってスゴいよね…。」

そう言った少女は、続きを躊躇いなく言う。

「あ、そうだ!ここいる皆でタッグ組もうよ!これ、すごくいいと思わない?」

…、それ、それ名案すぎる…!で、でも黒澤は…。

「黒澤君はせんせーだよね!!」

ニコニコとした少女が目を輝かせながら真っ黒のフサフサなクセ毛混じりの黒澤に自信満々で言う。

「え…なんで俺まで。」

素っ気なくて、女の子はとても悲しそうな顔をしていたけれど、黒澤が「まぁ、いいかも?」と言った途端に表情が明るくなった。

「俺、松岡秀二。ちなみにドラム習ってるんだ、結構腕には自信あるんだぜー!」

そういうとエアドラムをやってみせたあとに、「フィーバー!」と叫ぶ。

金髪だからヤンキーかと思っちゃった。
「僕は田中夕樹。ベースをやってるんですよー。見た目によらず結構できるんですからね!!」

そう幼い体格の男の子が言う。

「私は斎藤仁美、ピアノ担当です!」

皆の自己紹介が終わった後に、黒澤が何かを言いたげな感じで見つめてくる。

手話で "何" とやり、「俺も楽器弾ける、えーっと…ギター空いてるよね。」と、ぎこちない様に言う。

"えぇ、空いてる。黒澤がやってくれるの?明日雨が降りそう。"と手話でやってみせたら、「何を言う」と言い私の頭をグリグリしてくる。

「いいなぁ~…永子ちゃん、黒澤君と仲が良くて。羨ましいなぁ…。」

そんなことないよ、とは言えないので頭を盛大に振りまくる。

「確かに、でもここぞと言うときにソイツ頼りになるからよー。」

そういったあとに、「小学校時代、中学校時代ずっと同じだったんだぜー、いいやつ過ぎて泥になっちまいそうなくらいだった。」と、まさに自分が『悪』と言っているようなもの。

どこまでが自分のラインかこの人はわかってるんだ…なんか凄い優越感がする…。

「てなワケで!学校の道であっちゃったワケだし、急いで行かないとまずいですよね!」

仁美がそう言うので、皆駆け足で学校に向かった。
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