運命を。
「俺のこと、嫌いになんないでッ」

顔を離すとふわっと笑った。

『……!』

やっとこいつが何をしたのかが理解できた。

それを理解した瞬間、私は赤面した。

こんなこと慣れっこなのに…。

こんなことで…。

あり得ない…。

情けなくなってくる。

私は、こんなことぐらいで照れるような純粋な女じゃないのに…。

そう。

私は汚れた女なんだから。

「顔、真っ赤。もしや…、初めてだった?」

意地悪な笑みを浮かべそう言う。

『…な訳ないでしょ…!?ふざけないでっ!』

…そうよ。

私は初対面でも、キスもそれ以上も出来るんだから。

私を嘗めないで。

私は再度、男をニラむ。

「初めてじゃないんだ…!へぇ…ッ。ま、部屋戻ろっか…」

そう言うと、即で歩きだした。

『ちょ…っ。あんた…』

「翼。俺は翼。“翼”って呼んで?」

振り返り彼は耳の後ろをふと触りながら言った。

『…、何で呼ばなきゃなんないの?そんな義理はない』

キッパリ言うと、彼はまた笑った。

「いーじゃん。それか“梅ちゃん”」

『その方がやだ』

わがままな子みたいに言い張った。

声が響く。

「確かに義理ないよね?…でも、俺は花南ちゃんにそう呼ばれたいだけなんだ。俺のわがままなんだけどね」

何で、この人の台詞は…返事を困らせるの?

私のペースが乱れるの…。

やめて。

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