『狂っていたのは、僕だった』〜くる僕〜
時刻は午後7時
もうじき、2人は目を覚ますだろう
美咲さんの部屋はどんなに叫んでも聞こえない
日光を遮断してるから真っ暗な密室である
僕は兄さんの部屋に行った
まだ、か
口元しか見えないけど
かわいい
ほんと
放したくない
離れたくないよ
兄さんの肌に触れる
髪の毛
顔
腕
胸
すべては僕次第だと考えると
不覚にも笑みが溢れる
『ん…っ、、ん…』
兄さんは目を覚ました
『なんだ…これ…!?おい…誰か…っだれがっ…!』
混乱してるようだった
また、触れてみる
『んん!!やめっ…!だ、だれだ…よ!!!』
僕は無視し続けた
『美咲は…!!!?…悠は…っ?!?』
僕のことまで心配してくれるなんて
優しいね
そして
愚かだよ、兄さん
今、目の前にいるのは僕なんだから
『おいっ…こんなことして、許されると…っ』
《ちゅっ》
取り乱す兄さんの口を精一杯押さえ込んだ
『んんっ…んあ゛…やめろやめろ、、やめてくれ…』
「うるさいから、黙ってくれないかな?」
僕の声を聞いた瞬間
兄さんの目は丸くなった
見えなくてもそれがわかった
しばらく固まる様子がおかしくて
もう一度僕は放った
「それともまだキスしてほしい?」
沈黙が続き、兄さんは言った
『ゆ…う?悠…?じゃないよな…?』
幼い頃から聞いてきた
その聞きなれた僕の声だよ
「あーたり」
震える兄さんの体を強く抱きしめた
またキスをした
今度は抵抗しなかった
僕を受け入れたわけではなく
この現実が
現実だと気づきたくなかったんだろう
「これからは、兄さんは僕だけのもの」
今までもそうだったけど
もう邪魔いないんだ
僕は欲望のままに
何度も
何度も
口づけを交わした
どんどん僕で汚れていくのが
この上ない快感だった