君に向かって、僕は叫ぶ。
退院から2週間ほど経った、5月中旬。
梅雨も本番になり、毎日のように雨が降り続いている。
「あーあー。最近、雨ばっかでつまんないなー...。」
「美咲はさっきから、少女漫画読んでるじゃん...。」
「そうだけど、つまんないものは、つまんないのー!!」
「はいはい...。」
僕の部屋に寝転びながら、子供みたいに駄々をこねる美咲をよそに僕は机に向かっていた。
「ねぇー湊ー!勉強ばっかしてないで、何かしようよー!」
「"勉強ばっか"って言うけど、僕は入院してたときは学校行けてないんだから、遅れてるんだよ?それに、もう高2の真ん中なんだから、勉強しないと....。」
僕と美咲は高校2年生で、3年には進路が待ち構えている。
今、勉強が遅れるのはまずい。
だけど、美咲は勉強が大の苦手。
「嫌だ!そもそも平日は学校で勉強してるじゃん!何で日曜日に勉強しなきゃいけないの?」
「日曜日だから、学校で習ったことの復習とか、次の予習が出来るんだよ!」
「そんなのめんどくさいーーーー!私はやりませんーー。」
「テスト近いのに、知らないよ?」
「ふーんだっ!」
昔からこうだ。
僕が勉強していると邪魔してきて、テスト直前で泣きついてくる。
もう慣れたけど。
そして駄々をこねたあと、思いついたように言うんだ。
「「どっか遊びに行こっ!」ですか?ミサキサン?」
「うん!よく分かってるじゃん!」
僕の棒読みをスルーして、ピースを向けてくる美咲。
僕は呆れてため息をつく。
「どうせ、断っても無理やり連れて行かれるんでしょ。」
「さすが、幼馴染み!じゃ、近くの本屋さんでも行こう!」
「はいはい。でも雨降ってるから、ちゃんと傘持ってってよ?」
「分かってるって!湊、お母さんみたい!」
そんなことを言って笑う美咲は、楽しそうに仕度をし始めた。
僕はそんな美咲に苦笑いを浮かべながら、黒色の傘を手に取った。