君に向かって、僕は叫ぶ。
雨の中、美咲と話しながら歩く。
「でもなんで本屋なの?」
「私の好きな漫画が今日発売なんだ!ファンなら発売日に買う!これ常識だよ!」
「分かったから、指ささないで....!」
美咲はしぶしぶ手を下ろして、ため息をついた。
「私、雨って嫌いだなー...。気持ちが不思議と落ち込むー。」
美咲は昔からめんどくさがり屋で、雨降ってても傘はささなかったりする。
それに落ち着きがないから、外に行けないと駄々をこねる。
まるで、子供みたいだ。
そんな美咲と反対に、僕は勉強がはかどるから嫌いじゃない。
雨の音を聞いてると、落ち着くし。
「そうかな。僕は、雨けっこう好きだよ。」
「勉強できるからでしょ?」
「あっ正解!」
「湊のことなんてすぐわかるよ。私を誰だと思ってるの?」
「勉強が苦手で、子供みたいな美咲さんです。」
「ちょっとどういう意味!?」
美咲をからかって少し怒らせたところで、本屋に到着。
「じゃあ私じっくりとみてくるから、湊もブラブラしててねー!」
僕にそう言い残し、スキップで本屋に入っていく美咲を見送る。
思っていたより本屋には人が多くて、僕は入る気がしなかった。
本屋を出て空を見てみると、雨も少しだけになっている。
だから僕は、本屋の近くにある公園で、美咲を待つことに決めた。
本屋から公園までは、約3分。
その公園は、遊具もあまりなく人気ないから、余計に寂しそうに見えた。
濡れないように屋根のあるベンチに座る。
「美咲にメールしておかないと....。」
そう思って、携帯をポケットから出したとき、僕の視界に何か映った。
「.....!」
それは白い傘を持った、女の子だった。
肩まである長い髪は少しぬれていて、その横顔は雨に反射するように、輝いているように見えた。
でも輝いて見えるのは雨のせいではなく、「涙」だった。
....雨の中、女の子は空を見上げて、ただ静かに泣いていた。