君に向かって、僕は叫ぶ。
彼女の名前は、宮下 優雨(みやした ゆう)。

僕と同じ高校2年生らしい。

美咲を待つ間、僕は彼女とたくさんの話をした。


「宮下さんは、どうしてここにいたの?雨降ってるのに。」

「優雨でいいよ。...うーん、何でだろう。雨が好きだからかな?なんか音聞いてると、嫌なことを忘れられるから。」

「あー...それちょっと分かる。僕も雨の音聞いてると、落ち着けるから。」

「でも君の場合、ずっと部屋にこもって勉強してそうだね!」

「えっ!!何でわかったの!?」

「顔見ればなんとなく分かるよ。真面目そうで、どこか寂しそうな顔だ。」

「.......!?」


見透かされてると思った。

優雨は僕の心の中を見えてるみたいに言う。


「きっと、君は辛い経験をしたんだね。なんか...分かる。」


真っ直ぐ僕を見ながら、そう言った優雨は儚げに笑っていた。

その笑顔になぜか僕は、知り合って間もない優雨に今までのことを話していた。


「....もう1ヶ月くらい経ったんだけど、事故で、僕以外の家族が死んだんだ。」

「....うん。」

「最初はね、嘘だって思った。でも、嘘じゃなかった。

夢の中ではみんな笑ってるのに、目を覚ますと、僕は独りだった。

それが、現実なんだって、認めるのが怖くて....。

僕、死のうとしたんだ。退院する日、病院の屋上から。
でも、本当は死ぬことも心のどこかでは怖がってた。

僕は、結局全部のことから、逃げたかっただけだ。」

そう口に出したとき、なんでか泣きそうになった。

喉の奥がぎゅっとなって、涙がこぼれるのを我慢して止めようした時だった。


「湊。」

優雨が僕を呼んで、うつむいていた顔を優雨に向ける。

「...ん?」

泣きそうになってるのがバレないように、少し声を大きくして返事をする。

だけど、意味はなかった。


「泣きたい?」


優雨は、分かっていたから。

「......!!!」

驚く僕をよそに、優雨は笑って言う。

「泣きたいなら、泣いていいよ。私が、隠してあげる。」

そのとき、僕の中にあったいろんな感情がこみあげてきて、僕は泣いた。




-----僕が泣きやむまで、優雨はずっと僕を隠してくれていた。

そのおかげで心が楽になってきて、僕は話の続きを少しずつ話した。


「でも、生きることを逃げようとした僕を、幼馴染みが必死になって止めてくれたんだ。

そのとき、あぁ、僕は独りじゃないんだって気付けたんだ。」

「良い、幼馴染みね。」

「うん。その幼馴染みのおかげで、僕は今生きてる。

あのとき死ななかったから、優雨と出会えて、今こうして話ができる。

そう思うと、なんか良かったなって思うよ。

だからかな?この先も、生きていたいってそう思えるようになったんだ。」


「生きていたい....か。そうだね!....きっと、生きていれば...良いことあるよね!」


そう言って笑った優雨の笑顔に、僕の心は引き込まれていた。


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