君に向かって、僕は叫ぶ。
----いつ死ぬか、分からない。----
そう言った彼女は、淡々と語る。
「昔は、風邪も滅多にひかなかったんだよ?
でもある日、急にお腹が痛くなって、お母さんとお父さんと一緒に病院に行った。
訳も分からなくて、ただ不安だった。
何もありませんようにって、ずっと祈ってたけど....ダメだった。」
そう言った優雨の手は震えていて、僕はそっと優雨の手を握った。
"泣いてもいいよ"と伝わるように。
さとすように、僕は言う。
「優雨。どうか、こらえようとしないで。
優雨が泣いたからって僕は離れて行かないから。」
「.....うん。」
優雨は小さくうなづいて、再び話し始める。
「お医者さんにね....っ...."ガンです"って、言われたの...。
もう、手遅れだって....。
私、怖くて...病院を抜け出したの。
もうどうにもならないっていう思いとか、もう生きられないっていう現実を認めたくなくて...生きていたくなくて、死のうって思った。」
その言葉に思わずドキッとした。
優雨が握った手に、ぐっと力を込める。
「でも、違った。」
そう話す優雨は、もう泣いていなかった。
真っ直ぐに僕を見る優雨の目は、涙で濡れているせいか、輝いてるように見えた。
「君が、私に生きることへの未練をくれたんだよ。」
「え...?僕?」
「そうだよ。」
優雨は、静かに目を閉じて続ける。
「君の言葉に、私は救われたんだよ。
私に、君は言ってくれたよね。
"君の力になりたい"って。
私を知りたいって、話したいって...。
ただそれだけのことかもしれない。
でも私にとっては、それが...嬉しかった。
だって、こんな私を必要としてくれる人がいるって、そう思えたから。」
「優雨...。」
優雨の言葉に、泣きそうになった。
嬉しかった。
優雨の力になれたことが。
優雨の命を、守れたことが。
あと、何よりも。
「湊、ありがとう。君に出会えてよかった。」
...優雨の心からの笑顔を見れたことが。