君に向かって、僕は叫ぶ。
それから時間は流れ、一つ変わったことがある。
それは。
「美咲、この漫画見る?」
「あぁ!それ、新作だ!見たい見たい!ありがとう、優雨!」
優雨に美咲を紹介したこと。
きっと仲良くなれると思ったし、それに男の僕だけじゃ話しにくいこともあるだろうから。
「優雨もこの漫画持ってるんだ!」
「うん。けっこう好きなんだぁ。」
案の定、二人は仲良くなって、今では会うたびガールズトークで盛り上がるほどだ。
最近では、三人で遊びに行ったりして、すっかり三人でいるのが当たり前になっていた。
そして今日も、僕らは遊ぶことになっていた。
「いらっしゃい!二人とも!」
「さぁ、入って入って!」
「お、お邪魔します....。」
優雨の家で。
なぜこうなったかというと、時間は昨日に戻る。
----「へぇー!!優雨の家ってパン屋さんなんだ!」
「うん!お父さんがパン作って、お母さんがクッキーとかお菓子作ってるよ!特に、お父さんの焼きそばパンは、最高だよ!」
「すごいなぁ~!食べてみたい!焼きそばパン!!ね?湊!」
「え?あ、そう」
興奮している美咲に聞かれ、"そうだね"と言おうとしたとき、突然優雨が立ち上がった。
「じゃあ明日ごちそうするよ!!」
「え?」
「本当に!?」
つられて美咲も立ち上がる。
「うん!だから明日、私の家に遊びに来てよ!二人とも!」
「行く行く~!焼きそばパン~!」
「えっと...。」
楽しそうに話す二人に置いてかれそうになりながら、僕は声を出す。
「親御さんに迷惑なんじゃ...」
だけど、僕の心配を飛ばすように優雨は言った。
「大丈夫だよ!!私のお母さんたちだから!」---
その時は、その言葉の意味が分からなかったけど、今なら分かる気がした。
今目の前にいる、優雨のお母さんもお父さんを見たら。
「私、優雨の母の沙紀でーす!いつも仲良くしてくれてありがとうね。湊君、美咲ちゃん。」
「あ、いえ!こ、こちらこそ...!」
緊張しながら声を出すと、いきなり僕の背中が叩かれた。
「いやぁー緊張しないで!湊君!俺も沙紀も、二人に会いたかったんだ!!」
そう言ったのは、優雨のお父さんだった。
「ちょっと、武(たけし)さん。湊君、困ってるじゃない!」
「だ、大丈夫です!ありがとうございます。」
まるで僕や美咲を、家族みたいに受け入れてくれることが嬉しくて、楽しくて。
時間はあっという間に過ぎていった。
美咲は楽しみにしていた焼きそばパンや、沙紀さんが作ってくれたクッキーをもらって喜んでいた。
優雨も、大食いの美咲に驚いていたけど、楽しそうに笑っていた。
僕は、久しぶりに家族の温かさに触れた。