君に向かって、僕は叫ぶ。

あの後、病室の前にいた僕らは、出てきた優雨のご両親に
"そばにいてあげてほしい"と頼まれた。

大きくうなづいた僕らは、今優雨の部屋にいる。

僕らを見た途端、明るい声音で優雨は言った。

「二人とも来てくれたんだ!ありがとう!」


それから、話し続けている優雨。

「それでね、急に体に力が入らなくなっちゃって、気付いたら頭から血が出てきてさっ!いやービックリビックリ!」

笑って、話して、また笑って。

でも僕らは気付いていた。


君が、笑えていないことを。

泣きたいんだってことを、分かっていた。


けど、優雨はそれを必死に隠そうとしている。

優雨は優しいから。

僕らを悲しませないようにしてくれているんだね。

でもそれは違うよ。

優雨。


「で、お母さんたちも取り乱しちゃって、救急車に乗せられて病院直行!みたいな感じでね~---」

「優雨。」

名前を呼ぶ。

違うよって伝わるように。

「ごめんね!二人とも今日学校あったのに!あっそうだ!お詫びにリンゴ食べる?
近所のおばさんがお見舞いでくれたんだけど---」

「優雨。」

君に、僕の声が聞こえるように。


「...そ、それでっね...っ...!」

「...優雨、いいから。無理して、笑わなくていいから...。泣いてよっ....!優雨...!」

そう願う。

細い君の手を握りながら。

「み....な、と.....っ...うぁあああん.!!」

優雨は泣きながら、僕の手を握り返した。

握り返すその強さは、とても弱いものだった。


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