君に向かって、僕は叫ぶ。
次の日、優雨のお葬式が行われた。

たくさんのひとが花を持ち寄って、優雨の死を悲しんだ。

優雨のお母さんとお父さんは必死に堪えて、他に人に挨拶をしていた。

一番泣きたいはずなのに、辛いはずなのに、ぐっとこらえていた。


僕は、ただ立ちすくんだ。

笑顔で映る優雨の写真を見ながら、実感する。

優雨からもらった言葉を、何度も救われた笑顔を、大好きな君の声を、もう聞くことはできないんだって。

その帰り道を、独りきりで歩いた。

僕の足は、公園に向かっていた。

そこにいけば、優雨がいる気がしてならなかった。

ベンチに座って、公園を見渡す。

優雨は、どこにもいなかった。

「当たり前じゃないか。優雨は、もういないんだから...。」

自分で言った言葉は紛れもない現実で、胸をえぐれられるような痛みを感じた。

その瞬間、頭の中で優雨の声が響いた。

---「湊!」---

---「みーなと!」---

---「泣いていいよ。私が隠してあげる。」---

---「私、幸せ...。」---

---「だいすき。」---

---「ありがとう。」----


「うぅっ...!あああああああっ...!!」

涙が、溢れた。

もう届かなくても、伝えたくて、叫ぶ。

「優雨ぅっ!!」

君の名前を。

「僕も、だいすきだった...!!」

この思いを。

「ありがとうぉおおおお!!!!」



君に向かって。

完。
< 29 / 30 >

この作品をシェア

pagetop