君に向かって、僕は叫ぶ。
2:移り変わった世界で。
遠くの方から僕を呼んでいる声がする。
優しくて、聞き慣れたこの声は.....。
「湊ー?いつまで寝てるのー?学校遅れちゃうわよ!」
「母さん....?」
目を開けると、お気に入りの黄色のエプロンをした母さんが立っていた。
それに周りをよく見れば、ここは僕の部屋だ。
「どーしたの?変な夢でも見たの?」
ボーっとしている僕に母さんはからかうように言った。
夢.....?そうか....。あれは夢だったのか...。
母さんを見れば、いつもと変わらない笑顔で僕を見ていた。
「そうかも。ちょっと怖い夢見ちゃった。」
「まったく....昨日遅くまでゲームとかしてたんじゃないのー?ほら、早く顔洗って朝ごはん食べなさーい。」
母さんはそう言うと、僕の部屋から出て行った。
ふと時計に視線を移すと、時刻は8時を指していた。
「うわっ!早く仕度しないと!」
ベッドから飛び起き、階段を転がるように下りる。
これがいつもの僕の日常だった。
「母さん、今日の朝ごはん....」
そして、リビングの扉を開けながら朝ごはんの献立を聞くのも....。
だけど、リビングの扉を開ける僕を待っていたのは、キッチンに立ってる母さんでもなく
赤い赤い炎だった。
気付けば僕が立っている場所は、あの事故現場で、あの光景が広がっている。
夢だと思っていた。
でも、これは夢じゃない。
だって、この熱さも、痛みも、苦しさも僕は知っている。聞こえてくる。
「湊ぉーーーー!!!!!」
「熱いよぉおーーーー!!!」
「お兄ちゃぁぁぁん!!!!」
母さんと父さんと渚の、悲鳴。
助けを呼ぶ、みんなの声。
そして。
「みんな死んでるのに、何でお前は生きている?」
「お前が死ねばよかったのに。」
誰かの、声。