君に向かって、僕は叫ぶ。
美咲と別れた後、僕は足のおもむくままに歩いた。
ずっと歩いていると、どこからか泣き声が聞こえた。
その声の方向は、検査室だろうか。
子供の泣き声が聞こえてきて、思わず立ち止まる。
泣きわめくその声に、まるで誰かに心臓を掴まれているような感覚がした。
きっと、すごく痛いんだろう。
きっと、耐えられなくて泣いてるんだろう。
それはまるで、目覚めたときの僕のようで。
泣いているその子は、僕と一緒なのかな、なんて思ってしまった。
だけど、違った。
そう分かったのは、泣き声の間に優しい声が聞こえたから。
「大丈夫だよ」って、
「お母さんがついてるよ」って、
安心させるように、温かい声がその子を包んでいたから。
[その子は、お前なんかと一緒じゃない。]
そう否定されているような気がして、僕は逃げるように走りだした。
逃げる先なんて分からない。
でも、誰にも邪魔されない、楽になれる所に行きたかった。
走りながら思う。
僕は、何で生きているんだろう。
母さんも、父さんも、渚も、その子のように助けを求めていたのに、
家族なのに、
みんな死んでしまったのに、
でも、僕はまだ生きている。
そんなの駄目だ。
みんなを見殺しにした僕が生きていくなんて、許されない。
だから。
「みんなの所に行かなきゃ。」
長い階段を昇りきって、大きな扉を開ける。
扉を開けた途端に吹いてくる風を受けながら、僕は歩く。
白いフェンスの向こう側に。