君に向かって、僕は叫ぶ。
4:雨と白の傘。
あのあと、僕は駆け付けた医者や大人の人に引き上げられた。
美咲にたくさん怒られて、たくさん叩かれた。
とても痛かったけど、美咲も痛かったと思う。
だから僕は叩かれながら、何度も美咲に謝った。
「もう二度と、こんなことしないで。」
そう言った美咲は、目を腫らしていた。
僕は、美咲の頭を撫でながら、深くうなづいた。
それから僕は、退院の手続きを終わらせ、自分の家に帰ってきた。
退院の日、迎えに来てくれたのは、母さんの弟で、僕のおじさんあたる、弘樹(ひろき)おじさん。
弘樹おじさんは、"一緒に住めばいい"と言ってくれたけど、迷惑をかけるわけにもいかないにし、それに何より、みんなと過ごしたこの家を、僕は離れたくなった。
弘樹おじさんは別れ際に、こう言ってくれた。
「湊、いつでも力になるから、ちゃんと頼れよ。お前は、姉ちゃんの息子だけど、俺にとっても大事な息子だからな」と。
その言葉に涙をこらえることなんて、できるわけがなかった。
確かに、もう誰もいない家はとても静かで寂しいけれど、僕のことを大切に思ってくれる人がいるってことを美咲が教えてくれたから、僕はこの先大丈夫だと思えた。
「美咲。僕、落ち着いたら、みんなのお墓参りに行くよ。」
「うん!」
僕は、その時は笑顔で母さんたちと話そうと思った。