Way to happiness
今回は創にごちそうになって由宇と会社に戻る

「戻りました」

神野のデスクすら視界に入れず、冷静に告げる

「一ノ瀬さん…午後の業務は付箋してあります。
わからない所は聞いてください。
3時に平さんと打ち合わせがあるので、コピー分は
それまでに5部お願いします。」

「5部?ラグレスから誰か来るんですか?」

「ラグレスから一人…現場担当が来ます。」

「では、来客準備も3時までですね。」

「抜かりないですね。そういう人材は貴重です。
我が社に引き抜きたいくらい。」

「ここをやめる気はありませんので」

二人ともPCから目を離さず作業を進める

午前中とは全然違う空気の中、どんどん時間は過ぎていく

最初からそういう態度でいてくれたらいいのよ
来客準備終了、由宇ちゃんに報告も終了、
コピー終了、コピーを所長室に配布も終了…
あとは…

時計と神野をちらっと見る

難しい顔をしながらPCを睨む神野

もうすぐ3時…

気づいてないんだろうなぁ…
あんたの秘書じゃないんだけどなぁ…

「神野さん…そろそろ3時ですけど…」
「へ?あ!!もうそんな時間か!あ~どうしよう…」
「なにかあったんですか?」
「いや…ちょっと…」

あ~まどろっこしい…

神野のデスクに行くとPCを覗き込む

「…このデータだけ、印刷できなくて…」

はぁ…そんなことで…
初心者じゃあるまいし…

無言で印刷解除し、設定し直す

「はい、印刷できました。」

プリンタから出てきた紙を渡すと

「初心者かって思ったでしょ。あんたの秘書じゃないって?(笑)
こういうの苦手なんです。一ノ瀬さんが一緒にいてくれたら
仕事はバンバン片付くんでしょうね。
ねぇ、本気で考えてくれません?ラグレス勤務も楽しいですよ?」

「神野さん…平さんとどういう関係かわかりませんが
平さんの了承が無ければ無理な話ですし、時間に遅れて
打ち合わせに来るような人の話を平さんは聞きますかね。」
「わぁぁぁぁぁ!!後5分!!!一ノ瀬さん!俺行きます!
次の業務は共通フォルダとこれと、これと「いいから行ってください!」

無理やり会議室から追い出すと
深いため息をつく…

はぁぁぁぁ…

後3日…
有給ってだめかな…
無駄に疲れる…

ぐったりしながらデスクに座る
言われたフォルダを開き、渡された書類やメモ書きを並べていく

今さら…スキルアップしても…
これからの目標って言ってもな…

あれ…私の目標って何?

子供達の教育資金を貯めるとか?
家のローンを払い終えるとか?

それって私の目標?
夢がないなぁ…

いつから目標持たなくなった?

壱弥と出会ったとき…まだあったな…

結婚した時…もあった…

李都を産んだ時…ありすぎて壱弥に怒られたっけ(笑)

小都を産んだ時は李都の習い事に熱くなって…

それこそ李都と小都が目標を持つようになって
それを応援するのに精いっぱいだった…

精いっぱい?違うよね…
自分の事に手を抜いて後廻しにしただけ…

何を後廻しにした?

スキルアップ…自分のボディケアも…
メイクだって…

でも今さら…誰が見るって言うの?

待って…今さらって…

努力もしないで文句ばっかりいいわけばっかり

見ないふりして諦める必要もないのに諦めた?

じゃあ、今でもできる事って?

新しく始める?
それとも、今してる事のレベルアップ?

あ~…自分の事、こんなに考えた事なかったなぁ…

自分の服、何年買ってない?
美容院行ったの、いつだっけ?
誕生日クーポンで行ったのが最後?

わぁ…女、捨て過ぎ(笑)

まずは、服を買おう!
帰りに美容院に行こう!予約、予約…

「めちゃめちゃ笑顔で異世界旅行中ですか?「わあああ!!!」」


びっくりしたぁ!!

「な、なんでもないです!」
「打ち合わせ頑張った俺へのご褒美かと思いました(笑)」
「はぁ??からかわないで「からかってないですよ」」

真顔の神野にどきっとする

「な…んで…」

どんどん近づいてくる神野

「な…んですか…」
「からかってない」
「わかりました。でも、そういう冗談は「冗談でもない」」

後ろは壁

紗都は横にずれながら

「なんなんですか…」
「一ノ瀬さんこそなんなんですか…
昨日と今日の二日間で完全にやられましたよ…言うつもりなかったのに…
どんだけ策士なのかと思ったら素なんですもん
お手上げです。惚れました。」

「はぁあ?何いってるんですか?惚れやすい馬鹿ですか?
超近眼ですか?それとも女見る目無さ過ぎておかしくなったとか?
私には夫も子供もいますから!!!」
「ははは(笑)言いたい放題ですね。
一ノ瀬さんはそう思いたいんでしょうけど、一ノ瀬さんは綺麗ですよ。
めちゃくちゃ綺麗で、仕事もできるし、気が利くし、サポート力も半端ない。
家庭を壊す気は今のところないです。一ノ瀬さんのご家庭が
崩壊寸前とかなら話は別ですけど、一ノ瀬さんのことだから
そういうことは無さそうですしね」

「うちは幸せいっぱいです!」
思いっきり突き飛ばそうと手を上げると
両手を掴まれ、押さえ込まれる

一瞬…頬にあたたかい感触…

「口にしたら本気でひっぱたかれ「ばちーーん!!!!」

思いっきりひっぱたいた

涙が溢れて止まらない


なんなの!なんなの!!!
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