オレンジの花
トントントン
「開けてカナタ。カーナーター」
トントントントントントン
その日の夕方。
ドアを叩く落ち着きの無い音がする。
この叩きかたはナナだ。
「五月蠅いよ。今開けるから待っていて」
イスから腰を上げて玄関に向かう。
ドアを開けると、白い箱を持ったナナが満面の笑みをこちらに向けていた。
後ろにシルカもいる。もう買い物が終わったんだろう。
「カナタの分も買ってきたよ、オレンジパイ。オレンジ好きでしょ?」
はやく一緒に食べよう、と急かすように僕の背中を押して家の中に入る。もちろんシルカも一緒に。
「あー外すごい暑かった。冷たい水でもはやく出して」
無遠慮に僕のイスに座りシルカがだるそうに言う。
相当暑く、日にでも焼けたのだろう。
ふたりとも顔が赤く、いつもほっぺがが赤いナナは、林檎の様に真っ赤になっていた。
「えへへ、カナタお水はやく。あ、あと食器とフォークも。」
言いながらナナもイスに座り、待ちきれないと言った表情で僕を見た。
「はいはい…」
僕は冷たい水と、食器とフォークを持ちナナたちの元へ向かう。
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