Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
そして、大田先生の隣で腰掛けて視線を向けてる奏音の憧れの奴。
演奏前から嫌な汗が出てくるって。
目を閉じて深呼吸をしたい後、両手を鍵盤に添えて、
右足を何時もの様に音量調節のペダルへ。
レジストを変更出来るように、
画面を開いて、試しにメモリ番号を動かしてみる。
一通りの確認を終えると、メモリの位地を元に戻して
ゆっくりとリズムボタンを押した。
リズム用の小さなモニターに小節の拍数が表示されて、
俺はゆっくりと演奏をスタートさせた。
大好きなドラマの曲って言っても、
ようやく両手が、まともに追いつくようになった未熟なレベル。
足も演奏するようになったけど、
一小節に多くて、二音いれるのが精一杯。
後は、オートベース機能を酷使してる。
だけど何時もの様に同じ楽譜を演奏しても上級プログラムのレジスト。
オートベースなんて入ってるわけなくて、
俺が演奏する、単音のみが空しく響く。
拙い演奏がようやく終わった後、
視線をあげた先、女の先生は険しい表情をしていた。
ヤバっ。
教室に入れるレベルじゃないって
言われそうな予感がする。
そうなったら俺はこれ以上、
奏音の傍に居れない……追い付けない。
振り向かせられない。
女の先生と男の先生が話し合ってる間、
奏音の憧れの史也は、何も言わずに先生二人を見ていた。
「えっと、泉貴君だったわね。
大田先生とも話し合ったんたげと、
残念ながら……」
女の先生がそうやって切り出す。
やっぱりか……。
残念ながら、貴方のレベルでは
当教室には入学させられません。
残酷にも、淡々と告げられた
その言葉は俺にはある意味死刑宣告と同じで。
「面白そうだよ。
泉貴って言った?
二人とも泉貴を俺が預かってもいい?」
ただ傍観者で居ただけのアイツが、助け船?
マジかよ。
「史也、わかったよ。
史也が、そうやって興味を持つのも珍しいな。
史也に感謝しろよ。
まっ、教室のクラスは最下クラスの初級から」
男の先生はそう告げると女の先生と一緒に、
教室を出て行った。
「えっと……助けてくださって有難うございました」
とりあえず、
お礼言っておかないとな。
そう思って、ぺこりと頭を下げる。
「別に、君を助けたかったわけじゃないよ。
面白いものを見つけたからね。
断ることも出来た君が、それをしなかった。
なら俺はそれに答えるだけだよ。
今日、この後も時間かして貰うよ」
そう言うとスタジオを出て教室を後にして、
近くの建物の中へと入っていく。
そこの本屋さんで、二人の男の子たちと合流。