Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30


基礎練習を終えて今は、
先日組み上げた俺のレジストデーターを使って
左手のバッキングの練習だった。


音をギターにセットして、コードを順番に鍵盤を押して鳴らしながら
メロディーフレーズとリズムを意識しながらパッキングして行く。



史也の演奏のやり方もすげぇっと思うけど、
俺的には誠記さんの技にかなり魅了されてた。



誠記さんのリアルパーカッション。


それを習得するための練習なら、
何処まででついていってやるぜ。




左手のバッキングの練習が終わって、
今度は誠記さん独自のリアルパーカッションのレッスン。



ますばエレクトーンの前で手拍子。



手拍子の後は、実際にドラムを叩くように
右手と左手と足を意識してリズムを刻んでいく。


そのリズムをキープしたまま、
エレクトーン内のメトロノームをピコピコと鳴らして
鍵盤をじゃれるように、叩いていく。





最初に手本の様に演奏する誠記さんのリズムを聞いて、
その後の4小節は同じリズムを別の楽器で再現していく。



ただひたすらそれの繰り返し。




そんな練習をした後は、今度は誠記さんの作曲した
オリジナル曲を借りて練習する。



っと言っても、データーは愚か、
曲は自分で耳コピして楽譜を完成させたもの。



レジストも、睡眠時間を削って何とか形を生み出したものだった。



誠記さんの曲は必ず曲と曲の合間に、
リアルパーカッションの部分が必ずあって、
その特徴あるその部分が、前半と後半のサウンドを繋いでいく
潤滑油みたいに構成されていた。


お手製の楽譜を見ながら演奏する誠記さんの曲。



全く同じでなくていい。



この曲を俺の曲として演奏出来れば、
それでいいんだ。






「秋弦、仕上がってきたね。

 まだまだ荒削りだけど完成が楽しみだね。
 代わりに一曲、演奏するよ。

 Blue Moon。
 今朝、完成したばかりの一曲だよ」




そう言って、誠記さんは涼しい顔して演奏を始めた。



一曲、演奏を終えた後は俺をソファーに座るように促して
ゆっくりと切り出した。





「お前は大丈夫だよ」

「えっ?」



突然切り出された言葉に俺は誠記さんを見返す。



「奏音ちゃんには酷だろうけど、
 史也には片想いの君が存在するから
 奏音ちゃんと恋仲になるってことはないよ」


「えっ?」





情けないことに、嬉しいはずの言葉に、
俺はさっきから同じ言葉しか切り返せていなかった。




「俺もあったことないんだけどさ、
 アイツの同居人の話しだと、
 史也には、家の仕事で出かけた時に
 出逢った気になる存在ってのがいるらしい」



気になる存在?




そんな存在が居たら、
アイツの恋は……玉砕間近?




いやっ、
それは面白くねぇだろ。



アイツを……奏音を史也が泣かすなんて、
許せねぇだろっ!!




「秋弦……?
 秋弦、落ち着きなって。

 変な子だね。

 秋弦は史也が奏音に
 恋愛感情持ってない方がいいだろ? 」


「いいだろって、
 言いわけねぇだろ。
 
 俺はアイツから奏音を奪い返すんだ」


「あはは、熱いね……。

 だけど……、そんな君だから
 何時の間にか皆、君の周りに集まるのかな?


 秋弦……奏音ちゃんも見えてなかったかもしれないけど、
 お前も見えてないよ。

 奏音ちゃんを狙う、俺って言う存在がいることを……」



えっ?


奏音を狙う俺って言う存在?






マジかよ。




誠記さんが奏音が好きだって言ってんのか?





マテっ。
落着け、冷静になれ。





狼狽えるな、俺。






大丈夫だ。


悲しいかな、アイツが夢中になってるのは、
史也だけだ。





史也だけだ……。



だから安心しろ、俺……。


奏音を信じろ。





って言ってて、悲しくなりそうな
自己暗示だな。





「はははっ。
 お前の顔、見てたら楽しいぞ。

 まっ、戯言だから気にすんな。
 さっ、上の階行くぞ。

 そろそろ、奏音ちゃんのレッスンが終わるだろう」



誠記さんに言われて、
俺はレッスンの後片付けをする。



楽譜を鞄に片づけて、エレクトーンの電源を落として、
椅子を戻すと上の階へとエレベーターで移動した。



史也の家へと辿りつくとそこには一緒に住んでる知成さんが
姿を見せる。




「いらっしゃい、誠記、秋弦。
 今、おじさんにお茶とお菓子置いて来たところなんだ。

 口にあえばだけど、良かったら食べてって」



そういって誘導されたリビングのテーブルに
並べられた、紅茶とフルーツが飾られたケーキ。



「知成、ケーキ作るの日に日に、上手くなるね」

「どうだろ。
 ただ……作ってる時間は楽しいよ」


そんな会話をしながらケーキを食べる時間。



でも俺は、今も二人だけでいるはずの
アイツらの部屋が気になる。





ガチャリとリビングのドアが開いて、
姿を見せる、奏音と史也。



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