Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
「秋弦……そうだな。
今のお前には、下級生のレッスンなんて
頼めないな。
史也が居なくなって、
お前自身が、迷宮の中を彷徨ってる。
取り戻して来い。
お前自身のサウンドを」
誠記さんはそう言って、
俺を送り出すと、
太田先生と打合せをしているみたいだった。
俺は教室を飛び出して、
史也の姿を見かけた、あの病院へと向かう。
俺にとって……
行け好かねぇ奴だってずっと思ってた。
ずっと思ってたのにアイツがエレクトーンをやめることをしって
奏音以上に、迷子に俺自身がなっちまうなんてな。
どんなんだよ……。
プリンスのでっかい巨大な壁って。
気がついたら、俺の中に
ドーンっと存在しやがってさ。
心の中で思いつく限りの文句を呟きながら
バスに揺られて、
あの日、奏音が運ばれた病院へと向かう。
患者さんや、見舞客で溢れかえった
フロアーを通り抜けて、
病棟の方へと歩みをすすめるものの
そこてせようやく気がついた俺。
アイツが入院してるわけじゃない。
アイツの親父さんが入院してる
この病院。
アイツの親父さんの名前って何だ?
それに待てよ。
アイツの親父さんはプロのテニスプレーヤー。
アイツの母親は、ハリウッド女優。
待てよ……今さらに気がついた。
めちゃくちゃ、
ガード堅そうじゃん。
ナースステーションで、純粋に頼んだとしても
誰も何号室ですよーなんて教えてくれそうな雰囲気ねぇよな。
マテっ……。
マジで、
どうするよ。
入院病棟の廊下を行ったり来たり。
やべぇー、
それだけで俺、かなり怪しいヤツだろ。
かと言って、此処まで来て
目的も果たせず帰るなんてやりたくねぇ。
とりあえず病院内の地図だ。
地図。
そう思って、少しでも手がかりに
なりそうなものを探す。
ナースステーションの近く、
ようやく見つけた地図。