Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
「お見舞いですか?」
余程、怪しかったんだろうか?
いきなり地図を見つめる俺の背後から声がかかって
体がビクリっとこうばった。
「あっ、見舞いは見舞いなんですけど……
多分、ストレートに聞いても
教えてくれないと思うんで……」
って俺、看護師さんに向かって何言ってる。
そんなこと言ったら、
めちゃくちゃ怪しすぎるだろう。
「お見舞いですか?」
今度は強い口調で、
再度、問いかけられる。
怖ぇぇ……
「あっ、見舞いは見舞い。
けど、見舞いたい人の名前も、
病室も俺にはわかんねぇ。
尊敬する人のお父さんなんだ」
そうアイツの親父さん。
アイツが小さい時から、ずっと応援し続けてきた
偉大な存在。
そして……そこには絶対にアイツが
一緒に居ると思うから。
アイツの居る病室に行って、
俺はアイツを説得する。
もう一度、
エレクトーンやってくれよって。
バカな思いだって思う。
わざわざ、奏音の恋敵をこの世界に戻そうなんて
思わなくてもいいと思う。
だけど、そんな矛盾通り越して
俺がアイツに目の前を歩いてて欲しいって
思うようになっちまったんだから仕方ねぇだろ。
理屈じゃないんだ。
「その方と、どういった関係ですか?」
いちかばちか……
洗いざらいぶちまけるか……。
門前払い、覚悟で。
万が一ってこともあるよな。
「俺の尊敬してる人って言うのは、
エレクトーンで有名な蓮井史也。
この間まで、同じ音楽教室で習って教えて貰ってました。
その人のお父さんが プロのテニスプレーヤーだってことは
噂で知ってるんですけど俺、名前まではわかんなくて。
その人のお父さんが、交通事故にあって以来
蓮井史也と連絡が全く取れなくて、
電話かけても、留守番電話だから。
それで親父さんのお見舞いがてら、
逢えたらと思って……」
そう伝えた途端、
看護師さんは「無理よ」っと言葉を続けた。
向こうは
有名人だもんなー。
「じゃあ、このままでいいです。
蓮井さんの姿を見つけられるまで、
そっとしといてください。
俺も……逢うまで、帰れないんで」
って何言ってる?
看護師を困らせたいわけじゃない。
困らせたいんじゃないけど、
俺自身の目的も遂げたいんだ。
それ以上、何かを言われる前に黙って一礼して、
エレベーターの方へ移動しようとした時、
エレベーターのドアが開いて史也を見つけた。