Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
「秋弦君だったよね。
史也を心配してきてくれたんだよね。
史也、まともに話も出来なくてごめん」
「あっ、いえ。
それは別に俺が勝手に来ただけですから」
「それより史也さん眠ってないんですか?」
この病院で久しぶりに見た史也さんは、
勢いも余裕も何もなくて、
凄く心が疲弊しているように見えたから。
「眠ってないって言うか眠れないみたいだね。
この病院は完全看護だから面会時間しか様子は見れない。
だけど今は、小父さんの傍を離れると不安で仕方ないみたい。
マンションに帰ったら医大に入るって、
休息を忘れて勉強して学校に行って今日みたいに午後からの
面会時間に病院を訪れる。
それで小父さんの顔を見て、
ほっとするのか、意識を手放すように
短時間の仮眠に入る。
そんな生活が、
事故直後から続いてるよ」
そうやって話す、
若杉さんも、凄く疲れてそうに思えた。
「俺、何回も連絡したんだけど何時かけても携帯は留守電で。
んで……、一度姿を見かけた病院でなら逢えるかなって?
けど……今日は帰ります。
レッスンの合間に俺、またお邪魔してもいいですか?」
「それは構わないよ。
史也も喜ぶと思うから」
そう言うと、若杉さんは自分の連絡先をと携帯電話手にして
俺に教えてくれた。
こういう時だから史也は携帯にすら
気が付く余裕はないからって。
そう言われて交換して貰った電話番号とメールアドレスを登録して
俺は深々とお辞儀をすると病院を後にした。
思わぬプリンス自身の壁の存在に、
驚きを隠せぬまま俺はその場を立ち去る。
今は……多分、俺自身のプリンスに対する壁なんて
押し付けてもアイツの迷惑になるだろうから。
アイツは今、必死に自分の運命と向き合おうってしてるなら
俺は、俺で今出来ることをやっていけばいいか……。
俺自身もアイツの夢を……未来を受け継いで。
アイツの親父さんの為に曲を作ったなら、
俺がアイツの為に作るオリジナル曲なんてのも、
がらにもないけど……いいのかも知れないな。
プリンスと再会したそ以降も、
俺は奏音には告げずに何度も病院と教室と学校を往復し続けた。