Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
Episode01 アイツの時間 私の時間【秋弦×奏音】
【秋弦×奏音】
高校生から私と秋弦の時間は別々に動き出した。
あの日、史也君に振られてしまった私は、秋弦の優しさを知りながら
その温もりに溺れることなんて出来なかった。
史也君がダメだったからって、すぐに秋弦に走ってしまったら
アイツを受け入れてしまったら、私がずっと感じてきた史也くんが大好きって言う想いが
最初からなかったことになってしまいそうで……。
藤宮学院の中等部では、相変わらずアイツは私の傍で笑って
何も変わらない。
だけど何も変わらないアイツの優しさが私には苦しかった。
中学三年生になった時、高校受験を機に私は
もう少し冒険してみたくて神前悧羅学院の音楽科を目指したいと思うようになった。
高校受験とコンクールを両立させて、
必死に走り続けて高校生から悧羅学院の制服に袖を通した。
同じ悧羅学院の悧羅校に通ってたら、
大学生になった史也君と会うことが出来るかもしれない。
そんな浅はかな部分もあったかもしれないけど、
高校生活は思うようにはいかなかった。
私よりも上手い人たちが大勢いて、
その中で何度も自分の実力のなさに打ちのめされそうになりながらも
ただ史也君との約束にしがみつく様に音楽と向き合い続けた。
神前悧羅に通うようになっても史也君とは一度も校舎内で会うことはなかったけど、
大学部音楽科に進学した誠記さんとは何度も何度も顔を合わせることになった。
時に大学部のサロンコンサートに出掛けたり、
休日には誠記さんと一緒にいろんな演奏会場を回ったり。
大田音楽教室も卒業した私は史也君との時間の余韻を感じながら、
思えば高校生活、大学生活と私を支えてくれたのは誠記さんの存在が大きかったかもしれない。
気が付いた時には……10年の月日があれから流れてた。
「奏音ちゃん久しぶり。元気してた?
今度、大田先生が一緒に演奏しないか?つて声をかけてくれてる。
俺は顔を出すつもり。
だから奏音ちゃんもどうかな?って」
ある日、携帯電話が懐かしい名前を表示しながら着信を告げた。
「誠記さん、お久しぶりです。
大田先生がそう言ってくださってたんですね」
「奏音ちゃん、今どこ?」
「私は今、ミュージカルの演奏についてまわってて今日は福岡なんです」
「ミュージカル……そう。シェークスピアの真夏の夜の夢の公演が今だったかな?」
「はいっ。
誠記さんが紹介してくれた時から、ずっとこちらの先生にはお世話になってるんです」
「こっちにはいつ帰ってくるのかな?」
「一応、1週間後には帰れる予定です」
「1週間後だね、了解。
その時予定入れといて。大田先生にも伝えておくから」
「はいっ。……あの……誠記さん……今、史也君ってどうしてるんですか?」
思い切って会話を切り出してみる。
10年間、一度も……史也君の話題を出したことはない。
だけど……忘れたわけじゃない。
今もずっと……気になってる。
だけどその気になってる思いが『恋』じゃないのも、
今は気が付くことが出来た。
「あっ、史也も気にしてた。
二人とも気になってるんだったら、連絡くらい取り合えばいいだろう?
俺を間に挟まなくても。
秋弦なんて今も、アイツのマンションしょっちゅう押しかけてるみたいだぞ」
誠記さんはそう言いながら笑った。
秋弦が史也君のマンションに……。
それを聞くと、やっぱりなんか悔しい。
高校生から私と秋弦の時間は別々に動き出した。
あの日、史也君に振られてしまった私は、秋弦の優しさを知りながら
その温もりに溺れることなんて出来なかった。
史也君がダメだったからって、すぐに秋弦に走ってしまったら
アイツを受け入れてしまったら、私がずっと感じてきた史也くんが大好きって言う想いが
最初からなかったことになってしまいそうで……。
藤宮学院の中等部では、相変わらずアイツは私の傍で笑って
何も変わらない。
だけど何も変わらないアイツの優しさが私には苦しかった。
中学三年生になった時、高校受験を機に私は
もう少し冒険してみたくて神前悧羅学院の音楽科を目指したいと思うようになった。
高校受験とコンクールを両立させて、
必死に走り続けて高校生から悧羅学院の制服に袖を通した。
同じ悧羅学院の悧羅校に通ってたら、
大学生になった史也君と会うことが出来るかもしれない。
そんな浅はかな部分もあったかもしれないけど、
高校生活は思うようにはいかなかった。
私よりも上手い人たちが大勢いて、
その中で何度も自分の実力のなさに打ちのめされそうになりながらも
ただ史也君との約束にしがみつく様に音楽と向き合い続けた。
神前悧羅に通うようになっても史也君とは一度も校舎内で会うことはなかったけど、
大学部音楽科に進学した誠記さんとは何度も何度も顔を合わせることになった。
時に大学部のサロンコンサートに出掛けたり、
休日には誠記さんと一緒にいろんな演奏会場を回ったり。
大田音楽教室も卒業した私は史也君との時間の余韻を感じながら、
思えば高校生活、大学生活と私を支えてくれたのは誠記さんの存在が大きかったかもしれない。
気が付いた時には……10年の月日があれから流れてた。
「奏音ちゃん久しぶり。元気してた?
今度、大田先生が一緒に演奏しないか?つて声をかけてくれてる。
俺は顔を出すつもり。
だから奏音ちゃんもどうかな?って」
ある日、携帯電話が懐かしい名前を表示しながら着信を告げた。
「誠記さん、お久しぶりです。
大田先生がそう言ってくださってたんですね」
「奏音ちゃん、今どこ?」
「私は今、ミュージカルの演奏についてまわってて今日は福岡なんです」
「ミュージカル……そう。シェークスピアの真夏の夜の夢の公演が今だったかな?」
「はいっ。
誠記さんが紹介してくれた時から、ずっとこちらの先生にはお世話になってるんです」
「こっちにはいつ帰ってくるのかな?」
「一応、1週間後には帰れる予定です」
「1週間後だね、了解。
その時予定入れといて。大田先生にも伝えておくから」
「はいっ。……あの……誠記さん……今、史也君ってどうしてるんですか?」
思い切って会話を切り出してみる。
10年間、一度も……史也君の話題を出したことはない。
だけど……忘れたわけじゃない。
今もずっと……気になってる。
だけどその気になってる思いが『恋』じゃないのも、
今は気が付くことが出来た。
「あっ、史也も気にしてた。
二人とも気になってるんだったら、連絡くらい取り合えばいいだろう?
俺を間に挟まなくても。
秋弦なんて今も、アイツのマンションしょっちゅう押しかけてるみたいだぞ」
誠記さんはそう言いながら笑った。
秋弦が史也君のマンションに……。
それを聞くと、やっぱりなんか悔しい。