Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30
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誠記さんへ
お疲れ様です。
今日、九州公演の千秋楽です。
次のサロンでの演奏会用に、
昨日新曲の原譜を完成させました。
何か気がついたとこがあれば、
アドバイス頂けると嬉しいです。
もし可能だったら、3枚目の四段から五段目の頭から
誠記さんのキーボードパーカッションをリアル演奏でして貰えると
凄く嬉しいんだけど、ダメでしょうか?
とりあえず明日の10時の新幹線で帰るので、
着いたらまち連絡します。
下記は楽譜のアドレスです
http……
奏音
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メールに記されたままに、奏音ちゃんが作った
楽譜のアドレスをPCで打ち込んで、
手書きの譜面を手に入れる。
『愛すると言うこと』
そう言って仮タイトルとして記されたて
楽譜が出てくる。
楽譜に記されている通りに簡単にレジストを組んで、
リズムパターンをレジストの中に組み込んでいく。
一通りの作業を終えた後、
俺は奏音ちゃんの新曲を演奏する。
史也の影響を大きく受けていた頃の彼女の音よりも、
より奏音ちゃんらしい旋律が目立つようになってきたライン。
音の使い方も、リズムの使い方も、
史也の意思を受け継ぎながら、史也に染まっていない
彼女らしさが浮き彫りになる。
キーボードパーカッションをリアルタイムで入れて欲しいと
彼女が言いだしていた譜面まで来ると、
そのまま視線は楽譜見つめ続けて、音色を脳内で再生して
指先はエレクトーンをパーカッションモードへとボタン操作して
思いつくままに、キーボードを指先で叩いていく。
そんな作業を何回もパターンをかえながら演奏して、
一番最善の一つのパーカッションを俺の中で見つけ出していく。
そしてそのまま、録音をかけて彼女のメールへとデーターを送信させた。
作業をはじめて、二時間以上が経過してた。
手元の携帯電話には由美花からのメール。
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お兄ちゃんへ
晩御飯出来てるよ。
今から私バイトに行ってくるから、
お兄ちゃんも一息ついたら、忘れずにご飯食べること。
じゃないと、奏音にチクっちゃうよ。
由美花
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由美花のメールを読み終えて携帯を閉じると、
再びキッチンへと晩御飯を食べに向かう。
簡単に作業しながらでも食べやすいように、
サンドウィッチを中心としたご飯がレンジの中に入ってた。
サンドウィッチを頬張りながら大きなテレビの電源を入れると、
そのまま昔録画したコンクールの映像を再生する。
画面の中には、まだ高校生の奏音ちゃんが
コンクールで演奏した映像が流れていく。
彼女は史也に憧れて史也に失恋して一歩を踏み出した。
だけど彼女を思う秋弦の想い。
奏音ちゃんを一途に追い続ける秋弦の想いを知りながら
踏み出す勇気はない。
ふいに部屋のチャイムが鳴り響く。
フォンを取って来客確認をすると久しぶりに史也が姿を見せた。