Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30


「遅くに悪い」

「お前は今帰り?」

「まぁな。もうすぐ国家試験だしな。
 対策していかないと」

「大変だな。
 まぁ、少し上がって行けよ。

 今日は若杉は?」

「知【とも】は今日は妹の誕生日だからさ。
 こっちには帰ってこないし、珍しく時間出来てさ」


そう言うと史也は久しぶりに俺の自宅へとあがる。


史也と大田音楽教室で一緒にやってた頃は、
お互いの部屋の行き来は多かったけど今は殆どない。



「誠記の部屋、いつの間にかスタジオになってるんだ。
 しかも懐かしい、これ奏音の音だろ」


そう言いながら、史也は懐かしそうに画面の彼女を見つめる。


彼女はずっとコイツに憧れ続けてた。
いつもポーカフェイスを崩すことなく、表面上はにこにこと笑みを浮かべ続ける
コイツが、彼女にはいつも剥き出しの心を晒してた。

その度に傷ついて逃げ出そうした奏音ちゃんに
俺は手を伸ばし続けてた。


愛しいと言う想いを殺したまま。




「史也も少し食べるか?
 由美花がサンドウィッチ作ってくれてたんだ」

「サンキュ」



テーブルにサンドウィッチと珈琲を並べて、
二人して画面の彼女を見つめる。



「誠記、お前……ずっと言わないのか?」



ふいに史也が紡いだ言葉に俺は黙って頷いた。



「そうか……。
 お前が決めたなら口出しはしない」



史也はただそれだけ小さく呟いて、
また画面の中の彼女を見つめた。





 



秘める想いは……
今も当人には伝えることのないままに……。





彼女が幸せを掴むその日……
俺の恋が終止符を打つことを知りながら、
今はただ、彼女を見守り続けたくて。





END
< 93 / 93 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

優しい歌 ※.。第二楽章 不定期亀更新

総文字数/188,676

青春・友情132ページ

表紙を見る
【B】星のない夜 ~戻らない恋~

総文字数/222,071

恋愛(純愛)232ページ

表紙を見る
【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

総文字数/230,091

恋愛(純愛)317ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop