シンデレラの結末
「接点ないみんなを集めてくだらせたけど、同じ学校だし、まず友達からでもいい。一緒にバンド組みたい。」
「俺もちょうどひましてたし、賛成かな。」
「優生は?」
「私も…まだ楽器もできなけどやってみたい。」
「真田くんは?」
「僕は…」
呆れてしまう。
他人なんてどうでもいいけど、バンドを組んだらそんなこと言ってられない。
ひとりが下手糞ならバンドだってそういう目で見られるんだ。
「やるならやるで、どうするの?小笠原さんの楽器は?ベースがやりたかったわけでもないんでしょ。すぐに買えるようなものでもないし。」
「それは…」
「優生の楽器は俺が知り合い当たって、」
「僕は、小笠原さんに答えてほしいんだ。」
ほら、答えられない。
周りに頼らないと何もできない奴は、僕は認めない。
「要は真田くんは、やるなら本気でやりたいってわけだ。」
「うん。」
「俺だってどのバンドだっていいわけじゃない。弾けないようなメンバーなら続ける気はないな。」
どうやら、近藤君は僕と同じ意見らしい。
「タケだって経験はないに等しいわけだし、優生ちゃんは楽器をやったこともない。二人ができないまま、バンドを続けたって、俺たちは待ちくたびれる。曲を決めてテストをしよう。それで俺たちができると見込んだらバンドを組もう。真田くんは?」
「異議なし。」
「俺もそうしてほしい。認めてもらって、バンドを組みたいんだ。」
「わ、私も!!絶対、頑張るから。やりたい。」
期限は球技大会の次の日の土曜日。
あと一か月ないくらいだ。
曲は、近藤君が持ってきてた楽譜の中から選んだ、BUMP OF CHICKENの天体観測。
初心者には少し難しいかもしれないがこれくらいが弾けないようなバンドに長くいる気はない。
*****side Yuuki Ogasawara
怖かった。
唖然とした。
だけど真田くんと近藤くんが言ってたことは痛いほど納得した。
私の楽器はタケちゃんと近藤くんが友達をあたってくれるらしい。
楽器がない今、できることは譜読みだけだ。
楽譜とにらめっこ。
リズムを読む。
この音が何個目の弦のどこを弾けば出るかを楽譜に書き出していく。
大丈夫。できるよ私。
そう何度も言い聞かせて。
*****
それからの時間の流れはあっという間に過ぎたもう5月があと3日で終わる。
あの土曜日の二日後から、タケちゃんが中学の友達から借りてくれたベースを毎日弾いている。
吹奏楽部に入ってた時から、音感もリズム感もある方ではあると思う。
大分弾ける状態になってきた。
球技大会の応援パフォーマンスの練習とは比べ物にならないくらい楽しい。
絶対成功させてバンドを組もう。
球技大会まであと4日。
テストである曲合わせまであと5日。
*****
球技大会まで残り3日になったうちの学校は、今日から授業が球技大会の練習へと変わる。
「おはよう、優生。」
「おはよ。」
大事な練習日に遅刻をしなかったタケちゃんは、私が持っていたチアの衣装が入った段ボールを持ってくれた。
教室につくとみんながタケちゃんが持ってる衣装の箱に群がる。
「開けるよ?せーの…じゃーーん!!」
タケちゃんの掛け声で開いた箱からは、私が発注した青いチアガールの服が出てくる。
反応が怖い。
どうしよう。
みんなからセンス無いとか言われたら…
「かわいいね!本番楽しみになったかも!」
女の子たちの反応がよさそうで安心。
男の子たちは本当に俺たちもこれ着るんだな(笑)としみじみしていた。
「おはよー!みんなどうしたの?」
明るく教室に入ってきたのは、立川さんたち3人組。
「あ!衣装届いたんだ?私たちにも見せて!!」
「そう!タケ君が持ってきてくれて!!かわいいよね!」
そう言って衣装を一つずつ立川さんたちに渡していく、豊口さん。
「いつも助かるわ!!」
「タケありがとな!!」
みんながタケちゃんにお礼を言い出す。
私はそれでよかった。
「いや、これ発注してくれたの優生なんだよ。だからお礼は優生に言ってやって!!」
タケちゃんは私を立ててくれる。
みんなからお礼を言われて、最初は押し付けられたみたいで嫌だった衣装係も、貢献できたと思える。
…はずだった。
「青かー。あんまり好きじゃないかも。」
「私も。応援パフォーマンス出る気なくなってきちゃったなー。」
そう言いだしたのは、立川さんといつも一緒にいる三宅さんと佐藤さん。
クラスは一気に凍り付く。
「そう?俺はこれ気に入っちゃったけどね?まぁ好みはあるよな。」
「私も。青、良いと思う。ありがとう、小笠原さん。」
そう言ってこっちを向いた立川さんの顔は一切笑っていなかった。