シンデレラの結末

早くチャイム鳴って。
お願い。
先生が来て、HRが始まればきっと空気も変わるはず…
お願い早く。

「そこどいてくれない。僕の席なんで。」

この重たい空気を換えたのは真田くんだった。
言われた立川さんも他のみんなも唖然として真田くんを見ていた。

「そろそろ席付くかー!担任来るっしょ。」

タケちゃんの一言でみんなが席につき、チャイムが鳴った。

*****Side Take

ミスったな。
あそこで優生がやってくれたなんて言わなければ。
にしても真田くんには救われちゃったな。

「ねえタケ。そろそろこの前のカラオケの話、実現させてよ。」

猫なで声で香水臭いんだよなー。
口が裂けても言えないけど。

でもとにかく今はこいつを刺激したくない。
優生に矛先が向くことは見えているから。

「いつにしよっか。球技大会終わったあとの週がいいかな。」
「えー、今日にでも行くつもりだったのにー!!」
「俺は忙しいんですー!誰かさんが俺を団長に推薦したからー!!」
「ごめんて(笑)じゃあ来週の火曜日ね?」
「ほいほーい。」
「忘れないでよね!!!」

そう言って去っていく立川。
これでいいのか?

優生に笑ってほしい。
友達を作ってあげたい。
あわよくば高校生らしく彼氏だって作ってほしい。
そのためなら俺は、優生の周りを守るためになんだってしよう。

*****

迎える球技大会当日。
正直俺はそれどころではない。

明日のバンドのテストの方が一大事。
あーやべえ。
リズムがあってるかもわからん。

優生に見てもらって指導してもらったけど、まだまだだったな…
なのに優生は一か月足らずで完成しやがって!!!
くっそ…

そしてなんなんだ。
8:50登校の9:00開会式なのに。
団長はなぜ8:00から順番決めのくじをやらなきゃいけないんだ…
集合早すぎるだろ、ていうか昨日の放課後にでもやらせてくれ…
朝は弱いんだよぉぉぉおおお!!!

くじの箱の前に立つ。
こっちか…?
いや、こっちの紙だろうか。

「4組の団長さんはやくくじを引いてください。」

やめろ。
せかさないでくれ…
よし、これだ!!!!!

そして俺は昨日のみんなとの会話を思い出す。

「うちらのクラス完成度高いし、最後の方がいいよね!!」
「最初の方とか最悪だよな。」
「まあ最初の方じゃなければどこでもいい!」
「いや、最初なら最初でトップバッターなら許す。頼んだぞタケ!」
「おっしゃ任せろ。よし、長谷川。明日俺を7:00に起こしてくれ。」
「なんでだよ(笑)」
「いいのか!?遅刻してくじひけなかったら得点がマイナススタートだぞ!??」
「いや、なんで俺なんだよ(笑)」
「サッカー部って朝強いだろ?」
「偏見かよ(笑)わーかったよ!!!!起こせばいいんだろ!!?マナーモード解除して寝ろよ!?」

どうしてみんなこうも真剣なのかというと、応援パフォーマンスで一位を取ったクラスには、学校からクラス全員分の焼肉食べ放題がもらえるのだ。

落ち着いて振り返ってみよう俺はここでフラグを踏んでいた。
まず、マナーモードで寝なかったということ。

偶然、なぜか起きることができ、どうにかくじには間に合ったものの、残っているのは、最初から4番目と最後から2番目だった。
各学年5クラスの計15クラスで競うものだが、俺的に一番微妙な真ん中は回避した。
しかし俺には、もう最後から2番目を引くしかない。

自分の引いた紙には、4と書かれていた。
終わった。
みんなごめん。
ボクハマエカラ4バンメ、ヒキマシタ。
昨日の話で僕はもう一つフラグを踏んでいたんだね。

時計をみるとまだ8:20になるところだ。
みんなが来るまで30分もある。
もうだれか来ているだろうか。
集まりの悪い4組のことだから、まだ来ていても3人とかだろう。

教室の扉を開けると予想どおり4人しかいなかった。

「おはよう、みんな早いね!!」
「あ!タケ君!どうだった???」
「豊口さん、一言目からえぐらないで…(泣)」
「うそでしょ?(笑)」
「いや俺もそうであってほしいよ(笑)」

そうこう言っているうちに時間が過ぎて、みんなが登校してくる時間になった。

*****Side Michiru Sanada

教室に入るとみんな衣装に着替え始めていた。
いつもタケ君の周りは騒がしいけど、いつにもまして騒がしい。

「俺今日のためにすね毛と腕毛と脇までも!!剃りました!!!!!だから許してみんな…」
「本当だ~!!タケつるつるじゃん!!やだぁ!!(笑)」

黒板にはデカデカと「ごめん、4番目ひいちゃった。タケ」と書いてある。
原因はこれか。

「ちなみに中学の時の出し物で使ったカツラも持ってきた!!」
「タケだけ意識高すぎ!!(笑)」
「中学の出し物で何やってんだよ(笑)」
「AKBやってた(笑)俺はこじはるポジション(笑)ねー誰かメイクしてー!!」
「そこまでやるかよ(笑)」

*****Side Take

ポニーテールのカツラを付けて、立川に笑われながら化粧をしてもらっている。

「どう?俺、割といけると思うんだけど。」
「ちょっと笑わせないで手が震えるんだけど(笑)」
「隣のクラスの近藤、逆ナンしてこようかな(笑)」
「あの人なら行けそう(笑)よし、できた!!行ってらっしゃい!」

鏡に映った俺は、肌が白くなっていて目もでかい。
自分では何とも気持ち悪いが、客観的に見たらかわいい気がしてきた。

「いってくるわ(笑)」
「出番早いんだから、早く帰ってきなよー?」
「う、その言葉、俺のハートに致命傷なんだが…」

立川に大爆笑された。
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