シンデレラの結末
タケたちのクラスのパフォーマンスが終わり、全員が戻ってくる。
「近藤ー!見たか!!俺の三重の塔!!!」
「見た見た。ビビって最後手を離せなかった小鹿ちゃん状態のお前な。」
自分から話を振っておいてぎゃーぎゃーうるさいタケは放っておこう。
「優生ちゃん!」
呼ばれたことに驚いている優生ちゃんは小動物のよう。
「お疲れさま!」
「ありがとう。振り付けちょっと間違えちゃったんだけどねー(笑)」
「優生ちゃんって、もっと暗い子かと思ったよ。」
「え?」
「さっきだって写真、普通に撮ってくれたし、きっかけさえあれば話してくれる子なんだなーって。」
「そうなの。自分から話しかけるのとかは、苦手なんだけど…」
「そうか、よかった。これからバンドをやってくとして、仲良くなれなかったらどうしようかと思ったよ。明日のテスト楽しみにしてるね。」
テストという言葉に表情を強張らせる。
「う、うん。頑張る。」
自信がなさそうにする優生ちゃんは、今でも変わらない。
*****Side Yuuki Ogasawara
近藤くんはなんだか私を一瞬で理解してくれた気がして嬉しかった。
だけど、浮かれている暇はない。
明日のテスト。
それでだめなら、すべてが終わってしまう。
*****Side Take
球技大会は無事終わり、応援パフォーマンスの結果が出た。
4組は優勝できなかったが、アイディア賞をもらった。
優生との帰り道。
優生はなんだか強張っているようで、明日のことを気にしているんだとわかった。
「優、明日は大丈夫そう?」
「わかんない。私なりに弾けるようになったし、楽器のこともわかってきたけど…。」
「心配?」
「うん…。真田くんたちがどのくらいのレベルを求めているかもわからないし…」
ついに明日ということを実感させられる。
優生が大丈夫でも、俺が落ちることだってある。
むしろその方が可能性としては高い。
「タケちゃんは弾けそう?」
「先週、兄貴帰ってきてて見てもらったんだけど…だめだめだったわ。」
また優生が不安そうな顔をする。
「早く帰って練習しよう!!きっとこの不安は明日テストが終わるまで消えないと思うの。」
「そうだな、もう明日だもんな。」
立ち止まってはいられない。
*****
夜中になって、アンプを通さないまま練習をする。
集中こそしているものの、練習法はこれでいいのか?
前日になってそんなことをぼんやり考えながら、一小節。また一小節。
携帯が鳴る。
<起きてる?>
*****Side Yuuki ogasawara
<どうした?>
タケちゃんからの返信はいつだって優しい。
時計は2時を過ぎていて、テストまで残り12時間を切っている。
<何度練習しても不安で。一緒に合わせたい。>
お母さんが帰ってきていない家。
高校生になっても寂しいことは変わらなくて、静かな家は余計に不安を掻き立てた。
<いくよ。>
タケちゃんがつくまであと1分。