シンデレラの結末
*****Side Take
優生が寂しくならないように。
泣いてしまわないように。
今までもそうだったように、これからも。
ママが今日も帰ってこないと泣いていた優生にはお父さんがいなかった。
お母さんは、女手一つで優生を育てるために、夜は今もスナックで働いているらしい。
優生への愛情はもちろん、俺も会ったときは良くしてもらった。
けど、優生の母親は男癖が悪かった。
男のところへいって、帰ってこない日も多い。
それは今でも同じらしい。
こうしてたまに優生が呼んでくれるときは、必ず会いに行く。
優生のところまで、あと1分。
*****
優生が絶望的な表情を見せた。
「…ゆ、ゆーちゃん??」
何も言わないまま、俺のギターを見ている。
俺も言われないでもわかっている。
「タケちゃんのバカ!!!!!」
「え、えー!?」
「たかつぐお兄ちゃんに教えてもらってたんじゃないの!?」
「いや、去年教えてもらって…結婚して家出てってからも、帰ってきた時はちゃんと!!」
「タケちゃん、できるようになったらバンド誘おうと思ってたって言ってなかった!?」
優生と合わせてわかったことは、俺の個人練習は自分のテンポに合わせたものだったということ。
曲は流れたら、止まらない。
そんな当たり前に気付かない俺は、つまずいたら止めてそこから始めるという癖がついていたらしい。
「どれだけ間違えても、周りは止まらないよ。進まなきゃだめなの。」
久しぶりに優生が真剣に、強く話している姿を見た。
やっぱりバンドという選択は間違っていなかったらしい。
*****
突然、インターホンが鳴る。
誰だ?こんな真夜中に。
「やっぱりこっちにいたか。」
優生の代わりに出ると、近藤くんと真田くんがいた。
外はなんだか明るい。
どうやら、約束の時間を迎えていたらしい。
勝手だが、二人をあげ、優生の部屋まで連れていく。
*****Side michiru Sanada
前にタケ君の家がわからなくて、迷っているときに知った小笠原さんの家。
クラスメイトだということも、正直この日に初めて知った。
タケ君の家に行って誰も出てこないし、小笠原さんの家に行ってみたが、正解だったらしい。
連れていかれた部屋は女の子らしい部屋で、小笠原さんぽい部屋だと思った。
本人は、床で寝てるけど。
「おい、タケ。こんな時間まで女の子の部屋でナニしてたんだ?」
「何って練習だろ?テストは今日だぞ。」
「…タケ君って、童貞なの?」
「っはぁ!??!?」
顔を赤くして慌てるタケ君は面白い。
というか、タケ君はもっと遊んでる人だと思っていた。
「高校生にもなる男女が一つ屋根の下で二人きりなんだぞ?何もないわけないだろ?」
近藤君は、やっぱりそういう人間だった。
こちらはいろんな意味で期待を裏切らないらしい。
「ばっ、幼馴染には手はだしませーーーん!!!」
「幼馴染にだって間違えを起こすことくらいあるだろ?」
「ないです!!ない!!絶対!!!」
「触った?優生ちゃんの。」
「何をだよ、触んねーよ!!!!」
答えることがいちいち子供っぽい。
近藤君も興味津々な高校生そのものだけど。
*****Side Yuuki Ogasawara
タケちゃんに起こされる。
「あれ…私…」
いつの間に寝ちゃったんだろうか。
「えっ。」
よく見ればみんないた。
*****
必要最低限だけ持ってきたという、真田くんのドラム。
私の8畳の部屋が急に狭く感じた。
「いい?始めるよ。」
もうテストが始まってしまう。
間違えないだろうか。
ちゃんと合格もらえるだろうか。
タケちゃんも、一緒に。
真田くんのカウントが始まる。
あぁ、どうか間違えませんように。