シンデレラの結末
*****Side Michiru Sanada
近藤君のギターは文句なしだった。
歌も、悪くない。
この人とバンドがしたい。
そう思えるほど、僕と息が合うギタリスト。
*****
「優生ちゃん、本当に1か月足らずでここまで弾けるようになったのか?素人とは思えない。」
「え、本当?嬉しい!!じゃあ…?」
「俺的には合格。真田くんは?」
バンドに欠かせない、ドラムとセットのリズム感。
臓器を震わせるような重低音。
寸分の狂いのない音程。
「うん、合格。」
よかった!!と喜ぶ小笠原さんは、初めて会った時の、僕の苦手なうじうじした子ではなくなっていた。
「歌声も悪くない。」
決して世界を代表する歌姫だとか、そういうものではない。
だけど、魅了するような…そんな声。
「素直に褒めたらいいのに。」
近藤君は、僕の言いたいことがわかるらしい。
そしてここでまだ緊張に浸って、一言も発さない奴が一人。
「…タケちゃんは…?」
小笠原さんとタケ君は同時に僕たちを見る。
その視線で僕と近藤君は目を合わせる。
「タケ君のギターは正直ひどい。」
「あぁ悪いが、お世辞にも上手とは言えないな。やっと1曲通せたレベルだ。」
絶望を浮かべたのはタケ君だけではない。
合格だった小笠原さんの表情も曇っていく。
「確かに、タケちゃんのギターは驚くほど成長しないし、楽譜もあんまり読めてないけど…やる気は!!」
小笠原さんは必死にタケ君のギターについて俺たちの説得をするが、このレベルのギタリストをバンドに入れるのは、少し厳しい。
けど…
「確かにギターはいまいちだけど、僕は不合格にする気はないかな。」
「奇遇だね、俺もだよ。」
「ほん、本当!?俺、合格!!???」
さっきの絶望が嘘かのように表情を変える二人。
「ギターはあれだけど、歌はほしい。」
「僕も。」