この恋、賞味期限切れ
「よく憧子と一緒にいるよね」
「あ……うん」
なんだ。そっか。そうだよね。
少し期待しちゃった。
わかってたのに。
……わかってるんだよ、あたし。
宇月くんのことをずっと見てきた。
視線は一度も交わらなかった。
宇月くんの視線の先には、いつも、“あの子”がいた。
そういうことなんでしょう?
「あいつなんかとつるんでくれてありがと」
「い、いえ……」
言葉が続かない。
心臓がきゅうっとなって苦しい。
どうして宇月くんがお礼を言うの?
どうして宇月くんが嬉しそうに言うの?
あたしの名前を知っていたのも、プリントを集めるのを手伝ってくれたのも、あたしが憧子ちゃんの友だちだから?
あぁ、あたしっていやな子。
自分の中にこんなみにくい感情があるなんて知らなかった。
全部、全部、宇月くんのせいだ。
「舜也ぁ、帰ろ~よ~」
「あ、行かなくちゃ。じゃあまたね、幸村さん」
「うん……ま、またね。手伝ってくれてありがとう」
廊下の奥から金髪の女の子に急かす声が響いた。
愛想よく去る宇月くんに手を振る。
別れの挨拶も、お礼も、手の振り方だってぎこちない。
宇月くんのようにうまく笑えない。
やめてよ……。
そんな笑顔であたしの名前を呼ばないで。
ちょっとしたことで勘違いしそうになる。
まだドキドキしてる。
甘いだけじゃなくても、喜んでしまうの。