この恋、賞味期限切れ



金髪の女の子が宇月くんの腕に抱きつくのが見えた。

見えてしまった。



ドキドキがズキズキに変わる。

宇月くんと女の子が廊下を曲がり、姿が見えなくなると、よりいっそう苦しくなった。


この気持ちの行き場が、見当たらない。


あたしは、あの金髪の女の子みたいにはなれない。

だけど、あの女の子とあたしはおんなじ。


宇月くんには、もう、特別がある。


彼の心からの笑顔を見ることができるのは、世界中でたったひとりだけなんだ。



宇月くんと一緒に集めた資料を抱きしめるように持つ。プリントがくしゃっと折れた。

宇月くんとは反対方向に歩き出す。

廊下にあたしの足音だけがむなしく反響した。



……ずっと、甘いドキドキだけだったらよかったのにな。



そしたら幸せなのに。


どうしてなんだろう。

賞味期限が切れているのかな。


あんな簡単に落っこちてしまった恋が、初めから実らずに腐っていたと知っていたら、あたしだってここまで深く落ちていなかった。

腐った果実の、鼻を刺すにぶい甘美に、だまされてしまったの。



一度落ちたら、上がれないし、これ以上埋まれない。


宇月くんに告白をしてしまえば、さっきみたいなこともなくなる。

距離を取られてしまう。


憧子ちゃんの友達であるあたしから。


ここが一番近い距離。

もっと近づきたいけど、手は伸ばせない。


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