この恋、賞味期限切れ






木曜日。

その日の放課後は二回目となる委員会の集まりがある。


あたしは、風紀委員。

じゃんけんで負けてしまったのだ。



「あ、幸村さーん!」



集合場所である視聴覚室へ移動している途中、右肩を軽く叩かれた。



「う、う、宇月くん!」



宇月くんのほうから声をかけられちゃった!

名前も呼ばれちゃったよ!

あたしの妄想じゃないよね!?



「やほー。このあいだぶりだね」

「う、うん……。ど、どうして宇月くんが……」



いつもは派手な子が隣にいるのに、今は宇月くん一人。

めずらしい。



「あれ? 知らないの?」

「え? 何を?」

「俺ら同じ委員会じゃん!」



うそ!? 宇月くんも風紀委員だったの!?


風紀を管理し、整える委員会。
それが風紀委員会。

でも……目の前の風紀委員は、明るく染まった髪をしていて、シャツは第二ボタンまではだけさせている。


本当に宇月くんも委員会メンバーなの……?



「あ、信じてないだろ、その顔」

「だ、だって……」

「本当だかんな。最初の集まりのときに、幸村さんのこと見かけたし」



四月のときに行われた集まりで、宇月くんがあたしを見つけてくれた。

たったそれだけのことで有頂天になる。



「宇月くんは委員会に入らないと思ってたから、すごく意外」

「よく言われる。憧子にもバカにされた」



なんて幸せそうに憧子ちゃんの名前を口にするんだろう。


一瞬で気持ちが沈んだ。

胸がいやな音を立て、想いを蝕むみたいにつぶれていく。


聞きたくない。
そう言ってしまいたかった。


今、宇月くんの隣にいるのはあたしなのに、誰よりも遠くに感じる。



「クラスの女子に風紀委員一緒にやろうって誘われてさ。しかたなく入ったんだよね」

「そうなんだ……」



このあいだ、一緒に帰った金髪の女の子のことかな。それとも別の女の子?

宇月くんを好いている女の子は両手じゃ全然足りないからわかんないや。



「ま、センセーには『風紀委員なんだからしっかりしろ!』って毎日注意されてっけど」



へたくそなあいづちでも、宇月くんは会話を途切れさせない。

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