暴力の雨
三月十一日
俺は若い女とドライブしながらラブホテルを探していた。
国道を走りながら随分この辺りも変わったなと思った。
数年ぶりに走る道は激しい雨の中で全く知らない土地に来たような錯覚を覚えた。
最近出来た高速道路を降りて久しぶりにこの辺りを走るせいかそれとも、激しい雨のせいか俺には分からなかった。
車を走らせていて何かが見えたような気がして気になり俺は強引にUターンした。
女は何してんのよと横で怒鳴ったが俺は愛想笑いを浮かべちょっと悪いねと言う。
国道にそった狭い路地で二人の男が一人の男を蹴っているのが見えた。
俺は路肩に車を停めて少しだけ考えると車を降りた。
雨は激しく俺の身体を叩いた。
三月だと言うのに急に寒くなった為に俺は身体を暖めようとその場所まで走ったが途中の水溜まりに足を取られて派手に転けた。
俺は女が見ていただろうと思うと恥ずかしくなったが起き上がり苦笑いを浮かべながら今度は慎重に歩いた。
手を見ると転けた時に擦りむいたらしく少し血が滲んでいた。
やはり狭い路地で二人の男が一人の男を蹴りつけていた。
俺は大きな威嚇するように大きな声で話しかけた。
二人のうち背の高い方がこっちを見ると何だよと大きな声で返してきた。
俺は素早く男の懐に入りながらボディに二発拳を叩き込んだ。
背の高い男はいきなりの事で防御も出来ず身体を曲げた。
丁度良い位置に顔が来たので俺は髪を掴みながら思いきり頭突きを入れた。
背の高い男はその場に倒れた。
もう一人の男の方に注意を向けようと思った瞬間頬に熱い物が走った。
もう一人の男は、俺と同じ位の身長でボクシングの構えをしていた。
構え方やステップの踏み方が明らかにボクシング経験者だった。
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