暴力の雨
激しい雨の中で顔を見ると鼻の頭にニキビか吹き出物が見える。
二十代前半かもしかしたら十代かも知れないなと思った。
俺は既に肩で息をしていた。
四十代後半なのだから当たり前だったが、これは早めに決着を着けないと不味いなと思った。
男はステップを踏みながら余裕の笑みを浮かべているように見えた。
俺は頭から一気に突っ込むと男のジーンズのベルトを掴んだ。
男はいきなり距離を詰めて来るとは思ってなかったのか慌てたように拳を俺の頭や腹に入れてきたが、身体を密着している為にダメージは少なかった。
ベルトを両方の手で掴むと持ち上げながら投げた。
男が雨の中を派手に飛沫をあげながら転んだ。
上から腹を思いきり踏みつけた。
それで男の動きが止まった為に顔を二度三度と蹴りつけた。
さっき倒した背の高い方が起き上がって来ようするのが見えたので、そちらも蹴りつけた。
俺は二人を交互に蹴りつけ相手に戦意が無くなった頃を見計らい怒鳴る。
この場から消えろと怒鳴ったが喉が枯れていたのか声が、かすれてしまった。
二人の男は何とか立ち上がるとよろけながら逃げた。
俺は二人に蹴られていた男の所に行くと見下ろしながらどうしたと聞いたが、男は酷くやられていた。
声も出すのも苦しそうに見えた。
俺は男の顔を腰をおろして男の顔を覗き込みながら大丈夫かと聞いた。
男は泣き声のような声で要らない事をしやがって言った。
何とか立ち上がると顔は血まみれで相当腫れていたが俺の方に向けた顔は憎しみが溢れているようだった。
男は俺の顔を苦い顔で見ながら結局あんたのせいでまたやられるよと吐き捨てた。
助けたつもりが男にとっては迷惑だったのだろう。